2.ながれる
肩を揺すられる感覚に目を覚ますと、目の前には同じ顔が二つ見えた。赤毛で頬や鼻の頭にはそばかすをちりばめて、にっこりと笑う彼ら。その青い目には、困惑した十歳前後の私が映っていた。

「「お嬢さん」」

「この特急は」
「我らがホグワーツに到着したよ」

「なぜ君は」
「眠っているんだい?」

「さぁ、一緒に」
「「降りようではないか!」」

私の左側にいたその人に腕を掴まれ座っていた状態から立たせられた。余りに強く引っ張るものだから、前のめりにつまずきながら慌てて足を動かす。もう一人、私の右側にいた人は、私のものらしき少ない荷物をひょいと担いで私の背中を押した。

「あなたたち、だれ?」

私はどうやら列車の中にいたらしい。仕切られた部屋から三人は飛び出して、一番近い出入り口からプラットホームへと出た。ちらりと後ろを振り返って見たその乗り物は、赤い赤い蒸気機関車であった。そして、その光景にハッと思い出したのは…あの世界。

「俺はフレッド!」
「僕はジョージ!」

「「ウィーズリー家の双子とは我らのこと!」」

思わず瞠目する。『赤い特急列車』に『ホグワーツ』という単語。そして赤毛に、青い目をしたウィーズリー家の双子。揃いに揃った条件に、私は息を呑んだ。あぁ、私は…児童書のくせに結構えぐい内容の物語に転生してしまったのか!

いつの間にか私の荷物をどこやらへ預けたらしい手ぶらのジョージが、先を行くフレッドと私に追い付いた。早歩きをしながら盗み見る彼らは、私よりも大人っぽく見えるのだが…私達がこれから通うことになろうホグワーツには生き残った男の子とやらがすでに入学しているのだろうか?

船着き場まで着くと、他の沢山の生徒がいた。ここにいるということは、もしかしたらフレッドとジョージの二人は新入生ということだろうか。私は自分の首もとに手をやりアッと気付く。そうだネクタイだ!――彼ら双子がもし入学していたのなら、彼らは赤いネクタイをしている筈だ。しかし、今の彼らにはそれがない。そこから導き出した答えに、私は吐息を漏らす。

「ところでお嬢さん何ていうの?」

「…わたしは、レイリ」

「珍しい名前だね!」
「もしかして東洋人?」
「…え、えぇ」

舟に乗り込んでからフレッド?が声をかけて来た。この身がどの世界からの引き継ぎものかは大体検討はついているし、中身はジャパニーズなのだから、私は嘘を言っていない。「東洋人なんて初めて見たよな、兄弟!」「そうだな、相棒!」盛り上がる双子を尻目に、今日何度目かも分からないが、ひっそりと溜息を吐いたのである。

そうして、グリフィンドールへと組分けされた私は、半ば巻き込まれる形で彼らと付き合っていくことになるのだが…それはまた今後のお話。

20130810
title by MH+

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