万物流転 | ナノ
36.わらって10
マクゴナガル先生の部屋には、ウィーズリー夫妻と驚いたことにダンブルドア校長先生がいた。暖炉の前に座り込んで泣き続けていた夫人が飛び上がってジニーを抱き、ウィーズリー氏も直ぐあとに続く(ほんとうに、ほんとうに…よかった!無事で、生きて、帰ってきてくれた!)ジニーに負けず劣らず涙を流しながら夫人はぎゅうぎゅう娘を抱きしめている。ウィーズリー氏の目にもきらりと涙が浮かんでいた。

不死鳥フォークスは、僕の顔の横を通り過ぎていき校長先生の肩にピタッととまる。その隣りには胸に手を当て深呼吸で気持ちを落ち着かせようとするマクゴナガル先生がいらっしゃった。そして、夫人が…涙でぐちゃぐちゃな顔で僕とロンとレイリ先輩の三人をその両腕できつくきつく抱きしめる。一瞬、意識が飛びそうになったことは良い思い出だ。

僕が事の顛末を話して、ロンが僕の話に足りないところを付け足してくれた。ダンブルドア先生は、全てを見通したかのような目をして僕らの拙い話を聞いておられて、ジニーがやったことは日記のリドルに操られていた所為であることをどう説明しようかとしたところで口籠ると、助け舟を出して下さった。この部屋にいる聞き手は、魅せられたように静かに一言も漏らさないとでも言うように聞いてくれた。

そして、ジニーは夫妻に連れられて医務室へ行き、マクゴナガル先生は校長先生の指示に従いキッチンへ盛大な祝宴に相応しい料理を作るよう知らせに自室を出て行った。残った僕とロンと先輩は、ブルーの瞳を輝かせた先生に『ホグワーツ特別功労賞』が授与されることと、さらに一人につき200点ずつ寮に加点されることを約束した。

ロックハートが余りにも静かなので、不思議に思った先生は「ギルデロイよ、随分と控えめじゃな?」と彼に話を振った。僕は自分が彼の存在をすっかり忘れていたことにびっくりして、ロンを突いた。そして、慌てて彼に起った不幸をロンがもごもごと校長先生に説明をしたのだ。

その話を聞き終えた先生は、ロンに「彼を医務室へ連れて行ってくれんかね?」と頼んで、ロンはそのようにしたので、ついにマクゴナガル先生の部屋は、僕と先輩と先生の三人だけになってしまった。先生に席を進められて、僕と先輩はゆっくりと座った。

先生は膝の上で羽を休める不死鳥を撫でながら「まずはハリー、お礼を言おう」と言った。先生は『秘密の部屋』の中で僕が先生に真の信頼を示してくれたに違いないと、目をキラキラさせて言った。けれど、僕が「でも先生、フォークスは先輩と一緒に来たんです」と呟くと、首を持ち上げた不死鳥が先輩の肩にとまり先輩の頬にすりすりと顔を寄せた。

「なんと!ミス.ウチハがわしのフォークスを手懐けておる」

こりゃ驚いた!と言わんばかりに見開かれた両目に、居心地の悪さを感じたのか…レイリ先輩は、ちょっとだけ顔を赤くしてたのを、僕はよく覚えている。

20130813
title by MH+
*この長さ、予想外です
アズカバンの囚人
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