万物流転 | ナノ
46.めいしん
一週間、二週間と無情にも時間は過ぎて行って、ハリー達はさらに神経をすり減らして行った。しかし、ハリー達にも良いことがあったそうで、ハーマイオニーの話によればシリウスから手紙が届いたらしい。そこには『直接会って話をしたい。十一月二十二日、午前一時にグリフィンドール寮の暖炉のそばで、君一人だけで待つようにできるかね?』と書いてあったとか。

さらに『愛しのヘカテーは、わたしたちの贈り物を喜んでくれたか?あれは、リハビリ中であったが癒者に無理を言って、リーマスと一緒に選んだものだ。彼女が喜んでくれたら、と思う。』とも書いてあったそうだ。残念ながらシリウスさん。あなたの贈り物はヘカテーへは届いていないのです!

いつか、シリウスに、私の正体が彼らにバラされそうだなぁと危機感を覚えながらも、私は名付け親とその子の家族水入らずの為に、当日の夜は他の寮生を早めに談話室から切り上げさせるよう力を貸すことをハーマイオニーに約束した。

そんな二十日の朝、明日は土曜日でホグズミード村行きが許されているので、どんなお土産がいいかとアンジーとアリシアとお喋りしていた時、たくましい羽音を響かせた茶色の梟が私の元へ一通の手紙を運んできた。差出人を見てみると、ちょっと癖のある力強い筆記体で『Charles』と書いてあった。

チャールズ先輩からの手紙なんて、珍しいなあ。そう思って、すぐ開封し読んでみると驚くべきことが判明した。思わず飲んでいたカボチャジュースを通路へ噴き出して(アリシアからは「レイリ汚い!」と言われて)しまった。

***

いろいろと君に聞きたいことや、伝えたいことがあって、この小さい便箋じゃ、僕の言いたいことの「い」の字ほども書き切ることはできないだろう。

僕は今、三大魔法学校対抗試合委員会からの要請で、営巣中の母親ドラゴンを四頭ホグワーツへ運んでいるところで、土曜の夕方にはそっちへ到着する手筈だ。

レイリ。君は元気かい?双子には、迷惑を掛けられていないかい?九月に君らを乗せた特急を送り出した時に君は雨に酷く降られていたようだから、体調が心配だな。パースからは、君は風邪をこじらすと治りが遅いと聞いたよ。大丈夫?無理せず、休むんだよ。

日刊予言者新聞で、君が助手にそしてハリーが四人目の選手(それに助手がロン)に決定したと知った時、凄く驚いたよ。ハリーたちのことはもちろんだけど(ママなんかは憤慨してたし)レイリは、自分から目立ちたがるようなタイプじゃなかったから、かなり衝撃的だった。

例の新聞記者がハリーのことを記事にして載せてからは、もう、ママが涙、涙で、僕は君たちが第一の課題で何をしなければならないか、とても言えるような状態じゃなかった。ハリーやロン、レイリのことが心配で、今だって大変なんだよ。

何かドラゴンについて聞きたいことがあれば、いつでも僕を頼ってくれて構わない。僕は学校の先生でもなければ、対抗試合運営委員会の役員でもないからね。もし当日、酷いことになりかけたら、いつでも『消化呪文』をかけられるよう僕たちがそばで控えているから、思う存分戦ってほしい。

それと、双子のことだけど、あれだけママにWWWや注文票のことで叱られたのに、まだ懲りていないようだったら、連絡をくれ(ジニーから君の写真付きの手紙が送られてきたよ。すごくイケメンだった)もし、あいつらの発明した悪戯グッズの被害に君も遭っているとママが知れば、今度はただじゃ済まされないような気がするからね。

いくら細かい文字で綴っても、便箋の最後の行まで来てしまったようだ。名残惜しいけれど、今回はここまでで終わるよ。レイリ、十分気を付けて!

Charles Weasley

***

横から覗いてくるアリシアを阻止しながら、私はその手紙を大事にシャツの胸ポケットへとしまった。

20130907
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