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ーガツガツー
街の食堂。
無心で茶漬けを掻き込む敦の隣でミルクティを飲む焔。その向かいには太宰と国木田がいた。イライラを表すように忙しなく指をトントン鳴らしながら太宰を睨む。
「おい太宰、仕事に戻るぞ。仕事中に突然、『良い川だね』とかいいながら川に飛び込むやつがいるか!!おかげで見ろ。予定が大幅に遅れてしまった!!」
「国木田君は予定表が好きだねぇ」
手帳を掲げ、物凄い勢いで捲し立てる国木田に太宰はニコニコしながら茶化す。それを聞いた国木田はバンっとテーブルに手帳を叩き付けた。
「これは予定表ではない!理想だ!!我が人生の道標だ!!そしてこれには『仕事の相方が自殺マニア』とは書いていない!」
その音に焔は思わずビクッと体を揺らしうつ向いた。すると口一杯頬張った敦が国木田に視線を向けた。
「ぬんむいえおむんぐむぐ?」
、、、、何を言っているのかさっぱり分からない。が、国木田にはわかったらしかった。
「五月蝿い。出費計画の頁にも『俺の金で小僧が茶漬けをしこたま食う』とは書いていない」
「んぐむぬ?」
「だから仕事だ!!俺と太宰は軍警察の依頼で猛獣退治を、、、」
『国木田さん、、、、凄い、、、』
「君達、なんで会話できてるの?」
感心する焔と太宰。
暫くすると、ようやく満腹になったのか敦が箸を置いた。
「はー、食った!もう茶漬けは十年は見たくない!!」
「お前、、、」
お腹を擦りながら、満面の笑顔で言う彼の前には数えきれないほどの茶碗が重なっている。そして彼の言葉にさらにイライラする国木田。まあ、気持ちは分からなくもない。
焔はそんな二人を交互に見ながらミルクティを一口飲む。
「いや、ほんっとーに助かりました!孤児院を追い出され、横浜に出てきてから食べるものも寝るところもなく、、、あわや斃死かと、、」
「ふぅん、、、君、施設の出かい」
眉尻を下げながら話始めた敦に太宰が反応する。
すると敦はふと目を伏せた。
「出、、、というか、、、追い出されたのです。経営不振だとか、事業縮小だとかで、、、」
『追い出された、、、、、』
「それは薄情な施設もあったものだね、、」
気の毒に思うと同時に焔は何故か違和感を感じた。経営不振や事業縮小が理由にしては不自然な気がしたのだ。
、、、他に何か理由があった、、、?焔が考えていると、国木田が太宰を嗜めた。
「おい太宰。俺達は恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ」
「まあまあ、国木田君。で、焔ちゃん、君は?」
柔らかい笑みを浮かべながら問いかける太宰に焔は戸惑った。しかし、心配してくれている事は感じ取れたし、お茶もご馳走になった(国木田に)ため、、、話してみることにした。
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