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『はあ、、、』

誰もいない教室に小さな溜め息が漏れた。
その声の主は自分の机に立ち尽くし、散乱した私物を呆然と眺めていた。

辺りはすっかり夕暮れに染まり、少女の艶やかな長い黒髪をオレンジ色に染めた。

ここ最近、いつもの光景だった。

言われもない【事実】を突きつけられ、理不尽な暴言を吐かれ。
まだ、暴力にまで発展していないのがせめてもの救いだった。

『私、愛奈ちゃんに何したんだろう、、、』

少女、纒焔はポツリと呟いた。

虐めを受け始めてから持ち続けていた疑問。
それはかつての親友の豹変だった。


主犯である、風見愛奈は焔の幼馴染みであり親友だった。つい、半年前までは。

幼稚園、小学校、中学校と仲良しで、そのまま同じ高校を受験し合格。これからもずっと仲良しでいられる、、、その矢先の豹変だった。

原因はどうやら自分にあるらしいが、当の焔自身、まったく身に覚えがない。
本人に聞こうにも、最近は愛奈に近づくことさえ困難な状況で、迂闊に話しかけようものなら心を抉るような罵声を浴びせられる。
教師までもが焔を悪者扱いし始めており、相談しようにも出来ないし、育ててくれている祖父母にも迷惑はかけたくなかった。

八方塞がりで、どうにもならない。
ただただ、毎日のように罵声を受けて孤立させられる。
初めは悲しくて寂しくて夜にこっそり泣いていたが、慣れとは恐ろしいもので、最近は何を言われても何も感じなくなってきた。
反応しなくなった焔に、愛奈の味方の取り巻き達の苛立ちも最近ピークに達しようとしている事が感じ取れ、いつ、暴力を奮われるかわからない。

そんな状況だ。

そして今、その苛々をぶつけられた私物や机がえらい惨事になっていた。

『もう分からないよ、、、愛奈ちゃん、、、』

不満があるならば言ってくれればいいのに。
完全に、、、は無理でも改善出来るよう頑張るのに。

しかし、今の愛奈に何を言った所で無駄な気がすると言うのも本音だった。

仲良しだった穏やかな日々か思いおこされる。

何がいけなかったのか、、、。

どうするべきだったのか、、、。

どうすれば、また親友に戻れるのか、、、。

そんな事を思いながら、床に散らばった私物を拾い、片付けていった。




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