2
「おねえさん、ありがとう。
ぼくね、おねえさんにお話して、おねえさんが真剣に聞いてくれて、優しくしてくれて・・・・とっても嬉しいよ。
きっとね、みんなだってそうだと思う」
確かに、少年は普通の子供ではないかも知れないと思う。不思議な力がある。
「話すとか、聞くって、とっても凄い力を持ってるんだね。おねえさんに会えたおかげで、もう少し頑張っていけるから・・・本当に、ありがとう」
"ありがとう"
少年のありがとうが、自分でも分からないくらい、心にサクッと突き刺さっていく。一人分のありがとうじゃない気がして。
抱きしめ返された時、心がほっこりした。
「ふふ・・・不思議な子だね、」
きっとこの子は、死(悲哀)と感謝(愛情)の重みをよく知っている。だから人を幸せにする事だって出来た。
「お父さんにお母さんは、あなたに幸せに暮らして欲しいって思ってる筈だから。もうお家に帰って、もしも、もし次に会う事が有ったらその時は一番に見せる顔は笑顔でいてね」
「うん、わかった。おねえさんのお名前聞いていい?」
「ユキ、だよ。あなたは?」
「えーっと、・・また次に会う時にね」
悪戯に笑う少年の名前を私は聞けぬまま、彼の背中を見送った。
"また次に"という言葉。少年に少しでも気に入られたかな?なら私はきっと、あの子を少しでも親不孝の悩みから救いだせたんだと思う。ホッと、小さな幸せの溜め息が、真っ暗な空の下に零れた。