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観光から戻って来た二人の分、そしてそろそろ来るであろう最後の客人の分の紅茶を運ばせた。
「あれ?ウチのお菓子、何か赤い?」
「気のせいじゃないか?」
「気のせいだろ。」
皿を見つめるロザリアに対し、レスカもリリアも涼しい顔で紅茶を啜る。
「…来た。」
リリアが僅かに眉を寄せた。
「ちょっと!今度は何をやったの!」
「咲夜…。」
溜息一つ。
ギルベルトに相手をさせようにも今は手が放せそうにない。
「私が何をしたって?」
「それを聞いてるのよ!」
「何のことだか…」
「いや、ウチと琥珀のお菓子だけ赤い…」
「ロザリア、赤い紅茶もあるが?」
「……。」
リリアは笑みを浮かべ、傍らのティーポットを持ち上げてみせた。
「目が笑ってないぞ。」
「それは失礼。」
レスカの指摘に肩を竦め、ポットを下ろす。
「貴女、琥珀が辛いものが苦手だって知ってるでしょう!?」
「もちろん。辛いものが苦手なことも、類稀な御人好しであることも、」
だからこそ、とリリアは悪びれもせず言い切った。それが尚更咲夜を刺激する。
「貴女って、本当に…っ。」
「…仕方ない。」
咲夜の鋭い視線に対してリリアは溜息混じりに立ち上がった。
面倒だと言いながら、その口元は弧を描いている。
「ストップ!!」
『!』
制止の声に全員がその動きを止めた。
集った視線の先で琥珀が笑みを浮かべている。
「紅茶、冷めてしまいますよ?」
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