訪れた安息

リリアが不思議な拾いものをしてから早一月。

不思議な拾いもの、基、異世界から来たと言う少女たちを連れて庭園に出たリリアは穏やかな時を過ごしていた。




「どうした、琥珀?食べないのか?」




運ばれた紅茶に甘いスイーツ、周囲は春を彩る花に囲まれ、リリアは緩やかに紅茶を口に運んだ。

皿に乗せられているのは軽やかなパイ生地に甘いクリームが挟まれたスイーツ、しかし何故か琥珀の目の前に置かれた皿に乗るそれは、異常に赤かった。




「あ、いえ、その……」




人がいい琥珀は自分のために用意されたそれに文句が言えず、困り果てるだけ。

その様子を眺めていたリリアは口端を上げた。




「ギルベルト。」

「……。」

「!」




穏やかな空気を斬り裂くように、傍らに控えていたギルベルトが静かに剣を抜いた。

二つ三つ、斬り結んで無言の攻防が続く。




「マスターへの嫌がらせはやめてください。」

「嫌がらせ?私が何かしたか?」

「え?あ、リリアさんは何も…」




デッキブラシと呼ばれる掃除用具を振り回すアメリアに肩を竦めてみせ、リリアは問い掛けるように琥珀に視線を移した。この一月でアメリアが琥珀に逆らわないことは把握済みだ。

挟まれた琥珀は益々困り果てた。



「今日も賑やかやなー。」

「またか?」

「おかえり、ロザリア、レスカ。朱雀の案内は退屈だっただろう?…ギルベルト、少し離れろ。音が五月蝿い。」

「…イエス・マイロード。」




溜息を一つ、ギルベルトはデッキブラシを薙ぎ払った。




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