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綺麗さっぱり傷口が塞がった腕をまじまじと眺めながら礼の言葉を口にするマナに、便乗する形で深々と頭を下げるリネット。
しかし、此処まで畏まって礼を言われるとは思っていなかったのか、エレナとレジーナは恐縮した様子でぶんぶん手を振ってみせた。
「いえ、礼には及びません。目の前に困っている人がいれば、助けるのは当然の事でしょう?」
「エレナの言う通りですよ。気になさらないで下さいね。ところで貴方達は、一体何処からいらしたのです? 見ない顔ですから、聖域に住んでいる方とは思えませんし…」
もう一度失礼にならない程度にマナとリネットの顔を眺めるも、やはり知らない顔。
小首を傾げるレジーナと同じように、マナとリネットもまた困惑した様子。
「ええ、私達も困ってるんですの。仰る通り、私達は別の世界から来た、と思うんですけれど…。いきなり目の前に眩しい光が現れて視界が真っ白になったかと思えば、気が付けばこの森に迷い込んでいたんですの。
全く見た事無い場所でしたし、どうやって帰ればいいのか…」
「成程…事情は分かりました。それならば、私が貴方達を元の世界に送り返して差し上げましょう」
リネットの説明に、ようやく合点がいったらしくすっきりした顔つきでこくこくと頷くレジーナ。
すると、今まで黙っていたマナまでもが2人の会話に乱入してきた。
「え、マジで? マジでそんな事出来んの? 良かった〜、帰れなくなったらどうしようってめっちゃ焦っちゃったっての」
キラキラと目を輝かせながらレジーナを見遣りつつ、心底安心したように息を吐くマナ。
「ええ、出来ますよ。それでは今直ぐにでも…」
「あら、折角こうしてお会いできたのにもうお別れなんて、ちょっと寂しいじゃないですか。…あ、そういえば先程までレジーナとお茶していたんです。良ければ、貴方達も如何ですか? 皆さんでお茶した方が、きっと楽しいですよ」