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「エレナがいらっしゃるのは分かっていたから、ハーブティを用意しておきましたよ」

「わぁ、本当? レジーナの淹れるハーブティはとっても美味しいから、私大好きなんです。…あ、私もクッキーを焼いてきたので、一緒に食べましょう?」

「あら、いつも手土産を持ってきてくれて、本当にありがとう。それじゃあ参りましょうか」

レジーナがハーブティを淹れてくれていると知るなり、まるで子供のように無邪気な笑顔を浮かべながら心底嬉しそうにするエレナ。
そんなエレナを優しげな瞳で見守りながらテーブルへと案内すると、テーブルに置かれたティーポットからはハーブの爽やかな香りが辺りを包み込んだ。

レジーナはエレナに空いている椅子に座るよう勧めると、エレナは持参してきたクッキーをお皿に並べてから言われるがままに椅子に腰掛ける。
そんな彼女を見遣りつつ、それぞれのカップにハーブティを注ぐとそのうちの一つをエレナの眼前に差し出すレジーナ。

「さぁ、どうぞ。召し上がれ」

「ありがとうございます、レジーナ。頂きます……ふふっ、やっぱりレジーナが淹れるお茶は最高ですね。それに、何だか凄く気持ちが落ち着くんです」

「ふふっ、ありがとう。エレナが持ってきてくれたクッキーも、とても美味しいですよ」

カップをゆっくり口につけるなり、ふわりとハーブの爽やかな香りが鼻を擽る。
…と同時に、ほんわかと心の奥が温かくなってゆき、安らいでゆくのを感じた。

ゆったりとした、穏やかで優しい時間が辺りを包み込む。
お喋りに花を咲かせながらお茶をしていた2人であったが、不意にレジーナの双眸に鋭い光が宿った。

「……! 塔の近くで、空間の歪みが発生するのを感じました…。もしかしたら、何か異変が起きたのかもしれません。様子を見て来てまいりますので、エレナは此処で待機していて下さい」

「え、本当ですか…? それなら、私も行きます。私だって、この世界を守護する役目があるんですから」

「エレナ…。分かりました。一緒に参りましょう」

一瞬にして穏やかな空気は消え去り、代わりに現れたのは一触即発の張りつめた空気。
2人は神妙な顔つきで頷き合うと、警戒心を一層高めながら塔を後にした。