06
燿はわらわらと出てきた警備員たちを塀の上から見下ろした。
燿「なーんだ、これだけ?この私の出迎えにしちゃ少なくない?」
軽口をたたく燿に、警備員たちはがやがやと騒ぐ。
警「誰だ!ここは私有地だぞ!」
燿「…どこをどう見たらここが私有地じゃないと思ってるって思えんのかね」
燿は軽くあきれると、ぴょーんと警備員たちの上を飛び越えて地面に着地。
燿「ここさー、隠れ鬼的なのやったら絶対楽しいよね。そういうわけでお兄さんたち鬼。頑張って探してね」
言うなり燿は姿を消した。
当然警備員たちは騒然とする。
まさか本当に隠れ鬼するために来たわけがない、なにか目的があるに決まっている。
警「し、侵入者だ!中に連絡を…!」
警「急げ!」
わらわらと駆けていく警備員たちを、燿は屋上のパラボラアンテナの下から眺めていた。
燿にかかれば、屋上まで飛び上がるなんて赤子の手を捻るようなもの。
燿「さて…ここから燿様の本領発揮でございます」
燿はまたもやニヤリと笑い、また姿を消した。
一方、警備員室では上が下への大騒ぎ。
警「なにがどうなってんだ!」
それもそのはず、一階で姿がカメラに映ったかと思うと、次の瞬間三階で映ったり…。
さらに腹立たしいことに、どういうわけかその小娘から時々通信が来るのだ。
燿「ねぇ、まだ?暇なんだけど」
警「うるさい!無駄な抵抗はやめて早く出てこい!」
燿「無駄な抵抗ねぇ。そう言う割には全然見つけらんないって感じだけど」
恐らくどこかで誰かの無線を奪ったのだろう。
燿「早く来てよね?じゃ」
切られた無線を握り潰さんばかりに握りしめ、警備員たちは血眼になって監視カメラで燿を探す。
燿は適当にあちこち駆け回ってカメラに姿を映す。
そうやって煽れば彼らの視野を自分に集中させられる。
こうすれば監視の視線は自分に向き、フレデリカが気づかれにくくなる。
…でも。
彼らもそこまで馬鹿じゃない。
いずれ、これが陽動作戦だと気づくだろう。
稼げるのは…一時間かそこらだ。
燿「…頼んだよ。天使サマ」