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「あぁぁぁっ!!」

「な、何や何や!?」

大声を出したかと思うと、突然座り込む。頬を紅潮させる琥珀の前には、小さなダンボール箱。二人は顔を見合わせ、その中を覗く。中には子猫が三匹、寒さを凌ぐように身を寄せ合っていた。

「こ、子猫……!」

目を輝かせるレスカに、ロザリアは眉間の皺を濃くした。

「キモい」

「なっ……! き、キモいとは何事だ!」

「いつもとちゃうかったら何か変やろ」

「それにしたって失礼だ! ちゃんと気持ち悪いと言わんか!」

「つっこむところはそこかい!!」

ボケにもツッコミにも一切の妥協は許さないロザリア。だが、真面目なレスカに自分と同じようなツッコミができるかと言われれば……考えものである。

二人が言い合っている後ろで、琥珀は子猫を抱き上げた。三匹とも、黒く、美しい毛並みをしている。このままここに放置していくことが偲ばれるほどに、可愛らしい。

「連れて帰れないのでしょうか……」

「それは無理やろな。仕事の関係上、世話できるもんも少ないし」

肩を落とす琥珀を心配したのか、腕の中で子猫が小さく鳴いた。その声を聞くと、余計に離れがたくなってしまう。手に顔をすり寄せ、一鳴き。その行動の全てが可愛らしく、何としてでも連れ帰りたい衝動に駆られる。

眉根を下げ、子猫を見つめる琥珀。そんな彼女の姿に、ロザリアは呆れ気味に溜息をつくと、ダンボール箱を抱えた。

「え? ロザリア……?」

「しゃーないな……子猫、連れて帰んねやろ?」

「で、でも……世話できないって……」

「皆で交代して世話したら大丈夫やろ。レスカも連れて帰りたいって顔しとるしな」

「なっ……私は別に……!」

目を泳がせるレスカは新鮮だ。いつも冷静沈着で表情を崩さない彼女が、子猫相手に一喜一憂している。それがロザリアには面白くて仕方がなかった。

「二人共、その辺にして。猫ちゃんが吃驚してますよ?」

確かに、子猫は目を丸めて驚いている……ように見える。ロザリアがまじまじと子猫を見ていると、一匹が腕の中で暴れ始めた。

「え、え!? ね、猫ちゃん、どうしたの?」

慌てふためく琥珀に対し、ロザリアは冷静だった。暴れる子猫を抱き上げ、腕の中へ収める。すると子猫は、途端に落ち着きを取り戻した。ロザリアが撫でてやると、気持ち良さそうに喉を鳴らす。

「……やけに手馴れているな」

「そうかー? そうでもないけどな。こっち来たがってたみたいやったから、こうしただけやねんけど」

羨ましそうに睨んでくるレスカに苦笑する。どうやら、彼女も子猫を抱きたいらしい。だが、二匹は琥珀、一匹はロザリアの腕の中。どちらも動こうとする気配はなく、二人の腕で落ち着いている。下手に動かして驚かせるのは忍びないが、それでも戯れたい気持ちはあった。レスカはそっと子猫に手を伸ばし、頭を撫でる。威嚇されるかと思ったが、その予想に反し、子猫は実に気持ち良さそうだった。そして、琥珀の腕の中、レスカに撫でられながら眠り始めた。

「……!」

「良かったですね、レスカ」

嬉しそうに微笑む琥珀、珍しく優しい笑みを浮かべたロザリア。双方の表情を確認し、もう一撫でする。レスカは気恥しそうに頬を掻いた。

(終わり)