2

「俺の名前は香野。騎士団に属しているんだが…いや、まさか本当にこんな場所によろず屋があるなんてなぁ」

リビングのテーブルを挟んで向かい合う琥珀と香野。そしてロザリア。

彼はキョロキョロともの珍しげに室内を見回していると、ふと顔を正面に戻し、

「つか、従業員ってお前達だけ?少なくね?」

「今他の従業員は出払ってて…私とロザリアしかいないんです。もしよろしければ、依頼の方を詳しくお聞きしますよ」

琥珀はあらかじめティーポットに準備してあった紅茶をカップに淹れると、それを香野の前に差し出した。

「んー、それもそうだな」

香野はそう言うと、ポケットから一枚の写真を取り出した。

「この気難しそうな眼鏡がうちの隊長の珀憂。今回一緒に尾行してほしい相手だ」

「珀憂さん…ですか…」

琥珀とロザリアは渡されたその写真をまじまじと見つめ、記憶に留める。

香野は出されたお茶を遠慮なく飲み干すと、返された写真をポケットにしまい、ずいと前にのめり出す。

「そうなんだよ!さっきも言ったけど、今回はコイツを一緒に尾行してもらおうかと思って頼みに来た。なんだか最近怪しくてな…夜中にコソコソ出掛けてくんだよ」

「なんやそれ、裏取り引きか!?女か!?」

「ちょっとロザリア…」

楽しそうに目を輝かせるロザリアに、琥珀が小声で注意するが、仕方ないように溜め息をつくと、正面の香野に向き直る。

彼は考えるように顎に手を置くと、斜め上を見つめながら答えた。

「いや、アイツに限って裏切るようなことは無いと思うが…女、というのは確かに俺にも心当たりがある」

「!本当ですか!」

香野は頷くと、指を一本立てて静かな声で呟いた。

「俺…見たんだよ。珀憂が女と歩いてるところをさ」