深夜の大追跡事件簿
深夜の大追跡事件簿
穏やかな昼下がりを迎えた午後一時。
琥珀はお茶のためにと用意していたクッキーの箱を開けると、周りに誰もいないことを確認してから、その中の一つを摘まみ取り口に入れた。
「やっぱりあそこのクッキーは美味しいですー!」
彼女が幸せそうにもう一つ、もう一つとそれを頬張っていると、気付いた時には既に箱の中は空になっていた。
「あっ…」
「あぁーっ!琥珀何しとんねん!」
やってしまった…と最後の一枚を食べながら今日のお茶の時間には代わりに何を出そうか…と考えていた琥珀だったが、その際に突然背後から投げ掛けられた声に思わず肩をビクリと震わせた。
「ろ、ロザリア…」
恐る恐る琥珀が振り替えると、金色の髪を二つに結んでいたロザリアが、こちらに人差し指を向けたままに口を開けていた。
「それ、食べてしもうたんか…!?せっかく、今日の食べるのを楽しみにしてたんに…」
「ご、ごめんなさい!一つだけにしようと思ったんですけど、つい…」
「ついやあらへん!こうなったら、食べ物の恨みは恐ろしいということを教えたるわ…!」
と、鬼の形相で琥珀に向かって近付いてくるロザリアだったが、しかし彼女のその行動は、次に聞こえてきた物音により止まることとなる。
その音は玄関の方から聞こえており、どうやら誰かがドアをノックしているようだった。
「あっ、お客様かもしれない…!」
その音に救われた、とでもいうように琥珀は今にも掴みかかって来そうだったロザリアを避けて入口へと向かっていく。
「はい、どうぞ開いてますのでお入り下さい!」
靴を履きながらそう彼女は言うと、遠慮がちに半分程開いた扉に目を向けた。
「ここ…よろず屋ってのは本当か?」
そこから顔を出してきたのは、栗色の髪をした少年…いや、青年だった。
彼は琥珀が頷くのを確認すると、彼は途端に扉を勢いよく開き、ガシッと彼女の肩に手を置いた。
「あ、あの…!?」
突然の行動に琥珀は慌てるが、青年はそんなことには気にも止めずに言う。
「お願いだ!俺の仲間を一緒に尾行してくれ!」
「…は?」
琥珀は思わず聞き返していた。