両片思い



 今日こそ、明日こそ、毎日がそれの繰り返し。毎日遠くにいるそいつを眺めて、どうやって話しかけようかシミュレーションしていた。だけど、実際に話せたためしはない。

 生徒会専用の席は二階にある。正直、特別席なんていらない。おかげで食事に誘うこともできない。だけど、毎日顔を眺められるのは悪くない。

 あいつは友達もたくさんいて、サッカー部のレギュラー。県大会ではあいつの得点で優勝している。キャプテンとして表彰される際、表彰を渡す役が何故か俺だった。会長が親衛隊としけ込み過ぎてぎっくり腰になったからだ(泣いて誰にも言うなと口止めされた)。

 あんなに近くで顔をみたのは初めてだった。心臓がばくばくうるさくて、変な汗がでた。あいつは爽やかに俺に笑いかけ、表彰を受け取った。俺に好かれているなんて思いもしないだろうなぁ。

「今日こそは…」

 そう呟いてじっと見詰めていると、ふとあいつと目があった――気がする。確かにこっちを見ていた。しかし、我に帰ると高揚していた気分が一気に降下する。

 俺の隣にはタチ男子どもが憧れに憧れる副会長様がいたんだった。

「どうしたの?久遠くん。元気ないね」
「…んなことねぇ、し」

 副会長に顔をのぞきこまれる。和風美人の副会長は会長と同じ位の人気があった。俺も生徒会をしているが、顔で選ばれたのには納得しかねる。顔で選ぶならあいつでいいだろ。なんでサボりまくりの俺なんだ。仕事の覚えも最悪だし、人選ミスもいいとこだろ。

「久遠君って、なんだろう。顔が気色悪いよね」
「は?」
「なんていうか、整ってて」
「気色悪いって言いませんでした?」
「言ったよ」

 副会長はいつもわけのわからないことを言う。解読できるのは会長だけだ。

「ねぇ、さっきから彼のことずっと見てたでしょ」
「…彼って」
「風間くん」
「…」

 見てた。見てたけど、風間はあんたを見てたんだよ。ジェラシー感じてたんだよ、くそ。



 副会長と話した次の日、生徒会室に入ると意味が分からない事になっていた。豪華なでかいソファに副会長と風間が座っている。その上、副会長の膝に風間の頭がががががががが

「…なにやってんだ」

 俺はそれしか言えなかった。

 副会長はにっこり笑って俺を見ている。風間は目を見開いて、俺をじっと見上げていた。

「何って膝枕」
「ひっ、ひざ」

 副会長が今ほど憎く思えたことはない。殴り飛ばしたい。仮にも先輩相手に憎しみの感情しか湧いてこない。しかし、しばらくすると憎しみよりも失恋のショックに襲われた。じわじわと目と胸が熱くなっていく。

「……」

 黙って自分の席について、ぎゅっと膝を握る。
 元はと言えば、半年以上前から好きなのに話しかけもしない俺が悪いんだ。副会長は悪くないし、風間だって悪くない。

「久遠」

 名前を呼ばれて顔をあげると、何故か間近に風間が立っていた。困ったように眉を下げる風間の表情に、眼から熱いものがこぼれる。

「う……」
「あ、あの、久遠。いまのは、違う」
「なにがちげぇんだよ。副会長といちゃついてただろ」
「ちがう!副会長がそのいつも久遠にしてるとかいうから」
「膝枕をか!してねぇよ!」
「じゃ、じゃあ騙された!お前がされてるっていうから、その、間接膝枕と言うかなんというかその」
「なんていうかなんだよクソ!」

 ぼろぼろ涙が流れてくる。優しく拭われて、余計に胸が痛くなる。

「本当、副会長とは何もないから…」
「…うそじゃねぇだろうな」
「久遠に嘘なんてつくはずないだろ!」

 ぎゅっと抱きしめられて、心臓がばっくんばっくん鳴る。なんだこれ、なんで俺風間に抱きしめられてるんだ。なんだこれは…夢?


「君たち、付き合ってたの?」

副会長が呆れたように呟いた。


・・・・・・・・・・・

両片思いの話でした。
風間は風間で久遠大好きでストーカーくさい。
久遠は久遠で風間大好きだけど緊張して話せない。
でも一度接触するとカップル化という話でした(説明が長い)
副会長は完全愉快犯です。性悪です。



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