(現代パロ)














ごろんと寝返りをうつとごつごつしたものに触れた。それは、温かい。無意識に頬を擦り寄せると隣でもごもごと動く気配。「……7時か」寝起きで掠れてほとんど声になっていない声はそれでもおれにとっては歌みたいで心地良い。まだしちじ、とおれは言う。もう7時だ、と返る。起きようとするその固い腕にしがみつく。もったいない、もうちょっと、このまま。困るように止まった隣の気配。やがて低い声がおれをそっと撫でる。仕方無いな、と。そして再び丸まった気配に体をうずめる。至福。
知ってる。すごく無愛想でクールに見えるけど、朝は弱いし意外と笑いのツボは浅いし嫌いな食べ物は遠慮なく残すし(おれもひとのことは言えないけど)。クラウドのことなら、ぜんぶ知ってるつもり。ほかのひとは知らないことも、ぜんぶ。
それってすごい優越感。ごつごつした上腕二頭筋に包まれてる、この安心感、きっとほかの誰だって想像すらつかないんだと思うと。すごく、尊い。愛しい。


朝は、あんまり好きじゃないけど。でも、永遠に終わってほしくないとも思う。なんだろうなこの矛盾、ふしぎ、きっと謎は解けない。
隣からまた聞こえだした、少し間抜けな寝息。頬がゆるむのを抑えきれなくて、また寝返りをうったおれの前にきれいな、あどけない顔。好きが溢れて爆発しそうだ、どうしてこんなにも、好きすぎてもどかしい、だなんて。
差し込む光は柔らかい。溶かされるように、白い頬に口づけて。答えは、聞きたくないな。伝えるだけでいっぱいいっぱいなんだ、苦しくて、それ以上に愛しくて。この声にならない感情、知ってるようで知らない、胸を焦がすような思いは、一筋縄じゃあいかない、でもそのぶんだけ輝きを増すんだ。


だから、こんな脆くて危うい時間でも今だけは営ませておくれ、と。
ぼんやり願いながら、意識を手放した。






2011/06/29 22:43



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