(異説12回目)













きっと、ああいうふうにしかものを言えないんだろう。どこか相手をかわすみたいな言葉ばっかりのラグナとは対照的に自分や相手を守る言葉ばっかり使うんだもんな。あのラグナをいつも見てるからこそ余計に、っていうのもあるんだとは思うけど。
なんかさ、一応仲間で一緒に行動もしてるんだから、全部が全部自分ひとりで背負おうとするのはちょっとなぁ。オレのこと空気が読めないとか言うけど、ある意味不自然なまでにピリピリしてんのはそっちじゃないか、って思うことはある。それなりに必死なんだろうし、変に突っついてなんか言われるのもいやだから黙ってるけど。
ラグナはラグナで、たぶん本当は言うほどダメな奴じゃないのにいかんせん、ダメなふりをするのがうまい。真っ正直なライトニングさんがそれにカチンと来ることくらいわかってるはずなのにな。その思い通りの反応を見て笑ってるラグナはどうやらこの状況を楽しんでるから仕方ないとして。ライトニングはまた今日も今日とてわざわざぶつからなくてもいいようなラグナの言葉の端っこに馬鹿正直にぶつかってって感電してピリピリしてる、そしてその矛先はなぜかオレに向けられることが多い。特に八つ当たりして面白い反応とかしてないと思うんだけど。
ぼーっとするな、時間がないんだぞ、って、なんかいかにも子供が大人の言うそれを真似てみましたっぽい台詞でちょっと、ほんのちょっと可愛い。時間なんてあんたとラグナの痴話喧嘩っぽい何かでいつもいつも潰れてるんじゃないか。ユウナは笑ってるだけだしティファもカインもなんだかんだ止めないからその一見意味なさそうなやりとりがほぼ毎日繰り返される。別にそこまでいやなわけじゃないけど、生産性がないとは、思う。ラグナはわざわざ馬鹿を言わなければいいんだ、それなりに誠実にコミュニケーションをとろうとしたならライトニングだってあそこまで突っかからないだろ。で、ライトニングはスルースキルを磨くべきだな。
聞いてるのか、まったくお前はいつもいつも、って。また。聞いてるか聞いてないかしか選択肢がないんだろうか。聞きながら聞いてないんだけどな。それに今気づいたけどこのひとどうやら「お姉さん」をやりたいんじゃないだろうか。やりたいというか、潜在的ななにかが訴えてるだけかもしれないけど。元の世界で何があったかどんな人生だったかとかはライトニング本人ですら覚えてないんだからオレたちは当然知らない。でも何かと世話を焼きたがるし逆に甘えるなんて絶対にしないから。
いい加減にしろ、って、ついに後頭部をひっぱたかれた。普通に痛い。わりとすぐ手が出るのもライトニングのよくないところだ。言葉の扱いが不器用だからって逃げるなよな。振り向きざまふと目が合ってそれはほんとに不意打ちだったらしく色素のそんなに濃くない瞳が不自然に揺れた。そう、こうやって見ると顔立ちはそんな悪くないのに他に残念なところが多くてどうもね。あからさまに反らされた視線をなおも追い続けてみる。何を見ているんだ、やめろ、って言われたけどその声は普段ほど尖ってなくてどっちかっていうと消え入りそうだったからちょっと、ほんのちょっと驚いた。具合でも悪いのか。そりゃあんな毎日なにかしら当たり散らしてたら具合悪くもなるよな。
ヒュ〜ヒュ〜お二人さん何してるの〜?っていつもより殊更に意味のないラグナの声が風に舞ってくるとライトニングはまたキーキー言いはじめて元通りになってたけど。もう少し見てたらいとも簡単に「お姉さん」じゃなくなってたのかもしれないと思ったら、オレよりよほど空気の読めないラグナに竜巻の一発くらいは浴びせたくなった。



2012/12/28 17:19



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