怪盗ジャジャーンを追え!(葵!!)



ある静かな晩、
夜昊に厚い雲がかかり曇天の三日月がニンマリと笑いながら地を見下ろす貴陽の街。


今宵も何処か邸の奥底で『ジャジャーン!』という不可解な効果音が響いていた。


−−−−−−−−−−−


『今宵、あなたの家の奥で眠っているもの、いただきに参ります』

こんな手紙が来ましたが、何でしょうコレは?



御史台に届いた愛妻からの文にそう書いてあった。御史大夫葵皇毅は一瞬目をすがめるが、ぺいっと文を「読みました匣」へと投げ入れた。

何でしょうコレは?と、訊かれても何ですかソレは?だ。
知らん。

というより、文も急を要する特急便でなく普通便で届いた為、封を開けるのが遅れ既に手紙に記された『今宵』の時刻になってしまっている。

まぁ、気になる事は気になるが、馬をカッ飛ばして帰るような一大事ではないだろう。今夜は仕事も立て込んでいるので明日妻の顔を見に帰ればいい。

そう軽く流して皇毅は積まれた書翰に再び視線を落とした。


この時、帰っていればよかったものを−−−



翌朝、積まれていた書翰が決裁済みの棚に陳列されている成果を眺めながら、皇毅が室の空気を入れ換えようと窓を開けると、眼下にのびる石畳の路を配下の御史が走って来るのが目についた。

あれはこの室に来ると横目で扉を見据えていると、予想通り入室を乞う声が聞こえてきた。

「葵長官、後宮に異変がおこりました!」

「………後宮に?」

未だスッカラカンの?とまでは言わなかった。王がいたら言ったかもしれない。

「筆頭女官の十三姫と、逗留していた元女官の珠翠殿が忽然と姿を消したのです。最近、豪商や貴族達がひた隠しにしている盗難事件と関連があるやもしれません」

そういえば、本人達が『別に何も盗られてないしー!』と必死こいて否定する盗難事件が頻発していた。
人に言えないことをして手にいれた『お宝』が盗まれているようで、訴えるどころか否定されるので公権力も捜査も行えなかったが、そろそろ弱み握ったれと動くつもりだった。

しかし、その盗難事件とこの失踪。別段関連性は無い気がする。

「繋がっているとした理由はなんだ」

「盗難事件を被った邸から無理矢理押収した手紙と、後宮に残されていた手紙が一致しまして。それに少しずつ怪盗の詳細が判明し、モノだけではなく美女も盗むとの情報が……」

手渡された手紙を見た皇毅の瞳孔がまるっと開いた。




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