愛の藁人形


彩雲国国王、紫劉輝は執務室で黙々と編んでいた。


何を、藁人形を−−−


しかも沢山


「主上……そんな姿を秀麗殿が見たら幻滅しますよ」

その藁人形の行く先を案じた藍楸瑛は、出来立てほやほやの藁人形達を手に取ってみた。

日増しに編み具合が上達している気がする。
劉輝は細々とした事を器用にこなすが、その内藁人形まで芸術の域に達しそうで恐ろしい。

「余はその秀麗にせがまれて藁人形を編んでいるのだ。邪魔しないでくれ」

「えっ、秀麗殿がですか?これを?」

何で?

怪訝に眉を潜める楸瑛だが、嘘をつく理由も無いだろうし本当に秀麗に頼まれて編んでいるのだと思う。

しかし何の為だかさっぱり分からなかった。

藁人形にどの様な使い道があるのだろうか。
まさか正当な使い道で使用するのだろうか。


藁人形持って、夜な夜な丑の刻参り


「馬鹿な………いくらなんでもこんなに沢山」

「なんだ?」

顔を上げる劉輝に、いえいえ何でもありませんと首を振る。

「余はな、秀麗がこれで『幸せ家族計画』をしているのではないかと思うのだ」

また、何か言い出しましたよと楸瑛は興味深く耳を傾ける。
ぼそぼそと話す劉輝の頬はちょっと紅く色づいていた。

「沢山の藁人形で、余と秀麗の未来を占っているかもしれぬ。現時点で贈った藁人形は十体、つまり余と秀麗と子供達八人か−−−」

「ぶっ………!」

楸瑛も流石に吹き出しそうになるが堪えた。
いや、ちょっとだけ堪えられてなかった。

どうやって諌めればよいのか皆目見当がつかないが、取り合えず全然違うだろう。

「では主上、今作ってる藁人形が完成しましたら私が秀麗殿のお邸へお届けして幸せ家族計画の様子を窺って参りましょう」

正直、楸瑛もその真相が知りたくなってきた。

「ズルイ、余も行きたい!今回は直接渡したいのだ」

やっぱりか。

「………どんな結末でもめそめそしないで下さいよ」

一言だけ釘を刺し、良い日を選んで城下を降り御忍びで秀麗の邸へと向かう事にした。




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