葵家の愛鳥


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「皇毅様……鳥を飼いたいのですが、よろしいでしょうか?」


昼下がり、夫婦二人で卓子に向かい合いお茶を飲んでいると玉蓮が遠慮がちに切り出した。

「鳥………?」

皇毅は口に運んでいた茶器を静かに卓子に戻し視線を上げた。

思えば宮城に詰めてばかりであまり構ってやれていないのかもしれない。
そんな寂しい思いをさせていると知れば、無下に却下する事も出来ないというもの。

皇毅はうむ、と頤に手を添え思案しだす。

意外にも期待できそうな様子に玉蓮は背筋を正し、期待と不安の眼差しで答えを待っていた。

「いいだろう、知り合いに伝があるので一羽貰って来てやる」

「ま、まぁ………!皇毅様が?」

忙しい夫を気遣うべきなのだが、皇毅が選んで来てくれるという嬉しい提案にコクコクと首を縦に振ってしまった。



翌日、

市場で鳥籠だけを買って来てウキウキ待つ玉蓮に侍女から皇毅の帰邸が伝えられた。

「当主様が鳥を持ち帰ったと伺いましたよ」

「本当ですか……!」

瞳を輝かせ鳥籠を抱き、門へと急ぐと皇毅は邸の倉にいるという。

家令に案内され、広い庭院に面した倉へ到着すると皇毅が家人達と連れ帰った鳥を見ていた。

しかしそれは、

『鷹』だった


「……………」

小鳥が入るはずの鳥籠を抱いたままポカンとする。

玉蓮の姿を認めた皇毅が歩いてきた。

「知り合いに鷹匠がいて一羽貰って来た。仕込めば鷹文が出来るぞ」

凄く嬉しそうな皇毅。
もしや自分が鷹を欲しかったのではないだろうか。

「………………」

鳥籠を抱き締めて俯く玉蓮に皇毅はフッと小さく笑い、家人から小匣を受け取る。

「お前には此方だ」

「え、?」

匣を覗いてみると指で摘まめるくらいの雛がピヨピヨと嘴をたてて鳴いていた。

「こっちは仕込めば手乗りになるな」

「……とっても可愛らしい子です。ありがとうございます!大切に、大切に育てますね」

小匣を受け取り皇毅に抱きつく。


こうして、皇毅は念願の鷹を、玉蓮は欲しかった文鳥を飼うことになる。


鷹はその後、旺季邸と御史台へ飛ばせるようになり、玉蓮は皇毅に鷹恋文を送ったりして鷹の方も可愛がることになるのだった。


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