永遠に繋がる


改めて身なりを整えて今日はもう皇毅とは恥ずかしくて対面出来ないと考えながら回廊を歩いていると、室の前に凰晄が立っていた。

「凰晄様、お湯を頂いて参りました。ありがとうございます!」

にっこり笑って嬉しそうに言うが、凰晄はそんな玉蓮に気乗りしない声で告げる。

「皇毅がお前に用があるそうだ」

えっ、と思わず眉を下げると先程の事情を知らない凰晄は、この娘はそんなに皇毅が怖いのかと更にガッカリ肩を落とす。

そんな皇毅は既に表門に軒をつけ玉蓮が来るのを待っていた。

そして小走りでやって来た玉蓮に「宮城に行くぞ」と一言だけ告げる。

玉蓮は恐れていた事が起こってしまったと涙声で声を上げた。

「こ、皇毅様!先程の失態は申し訳ありませんでした!一生懸命お仕えしますのでどうか追い出さないで下さいませ」

家人達が見ている中でみっともない事は承知しているが、泣くだけでは駄目だと思い玉蓮は涙目で訴える。

控えていた家人達はポカンと固まった。
そして「追い出すのか?」と主人を見た。

「何を……言っているんだお前は」

余りの飛躍した考え方に皇毅は顔をひき吊らせるが、時間が勿体無いと「違うから安心しろ、説明は後でする」とだけ告げる。

玉蓮はまだ不安だったが、こんな時でも気になるのは皇毅の事。

「宮城にいかれるならば、侍医様に頂いた貼り薬の替えを持って参ります」

そう言って邸に戻ろうとするが、後から追ってきた凰晄が紙に包んだ薬草を玉蓮に渡してくれた。

「お前がついていれば安心だ。傷口が膿まないように気をつけて欲しい。それから時間が無かったので握り飯とお茶しか無いけれどお腹が空いたら食べなさい」

「凰晄様……」

渡された竹の葉で包んだご飯と筒を受け取った玉蓮は頭を下げた。

「行くぞ」

「はい、参ります」

玉蓮は包みを抱き締めて軒の横に控えた。

「……何つっ立っている、早く乗れ」

また噛み合わない二人を見て家人達は止まる。

「えっ、乗る?私侍女ですので……歩きます」

「いいから乗れ!それでも貴族の端くれかお前は!」

乗れ、サッサと乗れと追い立てられ玉蓮はあわあわと軒に押し込められた。

家人達はその様子に笑いを堪えている面持ちで皇毅に一礼し、二人を乗せた軒を出す。

(貴族の出だったか……先ずは良かった)

凰晄は皇毅の何気無く出た言葉に心底胸を撫で下ろし遠ざかる軒を見送った。




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