断交し難き一脈


冷たい朝の空気に晒された腕を無意識に掛布の中に入れ、温かい方へ這わせる。

−−−くしゅん、


玉蓮は自分のくしゃみでぱちりと目を開けた。

「こんな所で寝ているからだ」

上から降ってきた声にハッとする。
抱きついていたのは横で寝ている皇毅の身体で、足まで絡めている自分に慌てて手足を引っ込めた。

「あの、……すみません、寝相が悪くて」

咎めた内容と全く違う事で瞳を潤ませ詫びる姿は皇毅の失笑を誘う。

いつものように、そのまま抱き寄せ唇を近付けてゆくと、玉蓮は困ったような表情をしつつも瞳を閉じた。

「んっ、………ぅん…」

唇を吸われ今度は皇毅が身体を絡めて来る。

「ぁん、……いけ、ません…」

「顔がニヤケているぞ」

「そんな、嘘です!」

クックッ笑う皇毅と二人、朝のひと時を暫し愉しんでいると、不意に戸口から物音がしたような気がして玉蓮が皇毅の腕の中から顔を覗かせる。

「中にいらっしゃいますのは………玉蓮、様ですか?」

室の外から聞こえる侍女の声。

「は、はい!……怪しいものではありません、ご安心下さい」

漸く此処は東の対の屋の空き室だったと思いだし、慌てて昨日の経緯を考えていると戸口がコンコンと叩かれる。

「姫様、火桶とお召し変えをお持ちしました」

失礼致します、と戸に手を掛ける音がした。
玉蓮は真っ紅になって皇毅に掛布を被せ隠す。

「おい……!」

掛布の中から非難の声が上がるが、口を塞ぎたくてギュッと頭を抱き締めると玉蓮の胸に顔を押し付けられた皇毅は静かになった。

「失礼します、お早うございます」

「お早うございます!着替えは置いておいてくださいませ」

にっこり笑うが早く出ていって欲しくて素っ気ない返事をすると、侍女は寝台から起き上がらない玉蓮にムッとしたのか説教を始めだす。

「姫様、こんな所で夜を明かしては当主様に呆れられてしまいますよ!」

「は、はい………」

「丸薬も是非召し上がっ………」

その言葉の途中で侍女はピタリと止まり、不自然に盛り上がる掛布を凝視する。

「姫、様……もしかして、当主様とご一緒ですか……」

玉蓮が隠すように抱き締めている掛布へ思わず指をさす。

「え、!?いいえ一緒じゃありませんよ?」

慌てるあまり嘯いた玉蓮に侍女はガタガタと震えだす。

「それは、当主様じゃないのですか………姫様、なんてことを……凰晄様……凰晄様!」

「ちょ、ちょっと……お待ちください!」

悲鳴を上げて走り去る侍女にポカンと口を開け唖然となる。
腕から開放され、掛布から顔を覗かせた皇毅は開きっぱなしの戸に目をやってニヤリと笑った。




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