※ 現代パロディ、ユーリ孤児設定、成長後という勝手な設定となっております。
ご理解いただける方のみお進みください。





















今日、永遠を誓った。


俺は彼女を愛していて、彼女は俺を愛してる。
それは揺るぎようのない事実で、俺の人生で誇るべきことだと思った。



永遠なんて、ないと思っていた。
幼い時に家族を失い、いつでも孤独と戦っていた。
それも、いつかは終わると思っていた。




今日、俺は永遠を誓った。







「――――――――――――なのに、」





生きていくには、どうしてもお金が必要で。だけど毎月、園におくられてきた。
名前が読めなくて先生に教えてもらい、それもすぐ忘れてしまっていたくらいの時から、今ふとした瞬間口をついて出る長い期間。

誕生日には決めかねたようにたくさんのプレゼントが贈られ、クリスマスやハロウィン、お正月や七夕まで季節行事には鮮やかなバルーンとカードと、大きなプレゼント。



それらがぜんぶ、君は一人ではないと叫んでくれていた。




「コンラッド…」

「心から誇らしい。貴方が成長されて、大切な人を見つけられ、共に歩んでいく決心をされたことが。本当に、…心から」

「っなん、…は?だっ、て…だってコンラッドと、初めて会ったのは…、」

「好きだと伝えたら、貴方は困るでしょう?余計な恩を感じてしまうかもしれない」

「余計な恩、っじゃないだろ…!俺は、あんたのおかげで…こ、ここまで…!ずっと、ずっと…会いたいって思ってたのに…っ」

「その言葉だけで十分です。あの方は、とても素晴らしい方です」

「俺は、あんたがそうだって、知ってたら…」

「俺なんかよりずっと、あの方は貴方にふさわしい」


彼の敬語がもどかしい。
彼は俺に対してずっとそうで、何度もやめるように頼んでも曖昧に誤魔化された。
わざと、距離をとるように。


掴もうとしてもするりと逃げていくようだ。自分にも腹が立つ。



感謝してもしきれないような人を、何に代えても大切にしないといけない人を、俺は傷つけてる。まもるべき人を、間違えていた。


「何度も言おうと思っていました。触れてみたくて、…ずっと。こんな浅ましい思いを抱いていたことを、許してください」

「知らなかったんだよ…俺はずっと、」

「I LOVE YOUと、カードに書きましたよ」








HAPPY BIRTHDAY
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Dear Yuri

Wishes of happiness especially for you.
I wish that for every extra candle on your cake,
you receive an extra reason to smile.

Happy Birthday to you!


I LOVE YOU

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「…っちが、うだろう…!あれは、そんなのじゃな」

「違わない。俺は貴方を愛していました」

「………………コンラッド!」


頼むから、もう終わりみたいな顔をしないでくれ。
まだ何も分かってない。まだ何ひとつ返せてない。




腕を掴んで、その胸にすがった。こんな所じゃ話せない。何も伝わらない。





そう思って振り返った。


瞬間、俺の目に飛び込んできたのは、鏡に映る自分自身だった。






「…よく見て、ユーリ。貴方は今日、結婚するんです」

「っ、でも……!」
白い服を着て、さっきまで彼女のウエディングドレス姿を想像していた。


「俺だけ幸せになるのは、間違ってるだろ!俺はコンラッドがいたからここまで来れたんだから…なんで、まだ、なんにも返せてない…!」

「俺は幸せにしてもらいたいから、貴方を好きになったんじゃない。貴方が好きで、貴方に幸せでいてほしいから、」

「そんなのおかしいだろ!」

「それは貴方が決めることじゃない。けれど、…俺は幸せです」


見上げた目線が、銀の虹彩と絡んだ。

柔らかく弧をえがく目尻は、小さいころ夢見た、ここから連れ出してくれるヒーローのものだった。



震える手を掴まれて、幼い子どもにするように唇を落とされる。


「貴方が幸せならば、俺も幸せなんです」

「…そんな綺麗事、信じない。そんなの、……恋なんかじゃない」


コンラッドは、小さく頷いた。笑みを携えて、何を言ってももう彼には届かない。



恋じゃないと言われて、どう感じたのだろう。
二十年以上、胸の内で燻っていた思いを断ち切られて。



「恋じゃなくても、ユーリを愛してる」




彼はそう言われるのを待っていた。







桜咲く三月、結婚式が始まる。








――――――――――――










「つれてきましょうか」


先ほどまで園児を追いかけていたあとを前髪に残して、笑い皺のついた目尻を申し訳なさそうに下げた。渡した封筒を何か宝物のように折った膝の上に置き、立ち上がろうとする彼女に首を振った。


「いつもお手数をかけてすみません。後は、よろしくおねがいします」

「はい。…あの、何度も申し訳ないのですが」


もう一度首を振った。


「自分は、結婚をしていないので。きっと彼も、ここにいた方が幸せなんです」

「でも、ゆうりくんは会いたいと言ってるんです」

「嬉しいと、伝えてください」

「でも今日は誕生日です。今日だけでもゆうりくんのそばに」

「カードに贈る言葉が。自分が言えたことではありませんが、彼をよろしくお願いします」



踏み出した一歩は、誰にも知られず重かった。
遠くで、間違えようもない彼の声がした。
抱きしめて抱き上げて、「愛しています」と言えたらどんなに幸せだろう。
せめて彼の両親が俺にしてくれた半分でもいいから、彼が俺にくれた幸せの半分でも返せるように。





いつか、彼の笑顔を一目だけでも見られますように。


彼の生まれた七月、彼だけの幸せを願う。













君の笑顔ひとつでこんなにも満たされているなんて。君は一生気付かないだろう。僕はそれでもいいと思っている。


end







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