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跡部景吾は落ち着かなかった。いつもの彼からは恐らく想像できないような姿だった。校門に背中を預けながら、此処の待ち合わせは失敗だったか、と少し後悔する。きっと彼女にとっては自宅の方が解りやすかっただろうに。

今からでも遅くない、そう思って携帯を取り出して彼女へメールをうった。俺の家で待ってろ云々という内容だ。送信完了と同時に近くで着信音が聞こえて、そんな偶然もあるんだなと顔を上げた時だった。片手に赤い携帯を持って、長い金髪をゆるく編んだ肌の白い女がいた。


「久し振り。遅かったかな」


気まずそうに笑うなまえ。跡部は彼らしい笑いを浮かべてなまえに歩み寄る。そしてそのまま彼女を抱きすくめた。なまえは焦りもせずに、跡部の背中に手を回した。彼女は生まれこそ日本だが、両親はイギリス人だ。そして今までイギリスに居た。イギリス以外にも、親の転勤などでフランスやイタリア、ドイツ等にもいたらしい。要するに、彼女の中でこれくらいの接触は挨拶と言う事だ。
そんなことは予想してたには予想してたが、反応が正直つまらない。


彼女の華奢な肩を掴んで今までうずめていた顔を離した。彼女は今までのイギリスでの出来事を話していたがなにも頭に入らない。


「キス、していいか」


そう言うと彼女は一瞬目を丸くしたがすぐいいよ、と笑った。そんなあっさり、いいのか、と今度はこっちを目を丸くする番だったが、彼は思い直して彼女の頬に触れながら顔を近づけていった。するとなまえは跡部の頬にかるくキスをした。それで満足そうな顔をしているなまえを見て、そうじゃねえ、と心の中で呟いた。


「違ぇよ」
「え、」


彼女の顎を持ちあげてキスをした。しばらくしてから唇を離すと真っ赤になったなまえの顔があった。跡部は満足そうに笑った。


「…Warum?」


ドイツ語が出たのは彼女が焦っている証拠だ。跡部はまた笑って彼女の耳元に口を寄せた。


「Ich liebe Sie.」
「………Ich bin so auch.」


そこまで言葉を交わして二人で吹きだした。なまえはなんでドイツ語なの、と訊いてきた。だから跡部は彼女に囁いた。流暢な発音だった。「Ti amo.」「Je t'aime.」「Ik hou van jou.」「Jeg elsker deg.」「Eu te amo.」「Te iubesc.」「I love you.」


頼むからわたしだけにしてよ。彼女は言った。表情こそ笑顔だったが、目は本気だった。





title by Que sera sera
1016 // With Atobe!*


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