中編 | ナノ


少し早めのお昼休憩をもらって、私は筧様を探しに回った。急がなければ出雲へ発ってしまう。城門付近に向かって走ると、曲がり角で誰かにぶつかった。しかし、幸運なのかぶつかった方は筧様だった。

「筧様!申し訳ございません!」
「姫か!どうしたんだ、そんなに急いで」
「筧様を探しておりました」
「ん、某を?」
「はいっ」

私は懐に入れておいた袋を取り出す。立派な医者でもない私が作った薬を筧様に渡してもよいものかと、今更ながら躊躇してしまう。でも、なにか役に立ちたい気持ちが後押しして、おずおずとそれを筧様に差し出した。

「昨夜、あの後に父が遺した医学書をみて作った傷薬です。その…よかったら持っていってくれませんか?」
「……かたじけない、姫。大事に使わせてもらおう」

最初驚かれた様子だった筧様はすぐに微笑んで私の手からそれを受けとってくださった。そして、その大きな手で頭を撫でてくれる。筧様は父様みたいで、すごく安心する。私はいつもついつい笑顔になってしまう。

「それでは、行ってくる」
「はい‥お気をつけて」

筧様は私の作った傷薬を大事そうに懐にいれ、手を振って、真田様たちのところへ向かわれた。

私はそのあと、こっそりとお見送りするために陰の方で待っていた。すると間もなく、真田様や海野様、霧隠様、伊佐那海様と続々と現れた。もちろん、佐助様も。今朝のことを思い出すと、どきどきしてしまう。
佐助様は伊佐那海様に近寄ると、ミミズクを差し出した。

「かわいーっっ」
「蒼刃の子ども 伝達に…役立つ」
「連れてっていいの?」
「ありがとう佐助!」
「う…うん」

ほんのり染まる頬。その後すぐに真田様に冷やかされ、佐助様はその場を逃げるように去った。その去り際に見えたお顔は赤くなっていて。私は胸の中がずんっと重くなった。筧様を見送りにきたはずなのに、私はなぜか佐助様から目が離せない。佐助様は私のすぐ近くの木の上に落ち着く。すると、すぐに私に気がついた。思わずぶつかる視線にどきっとする。佐助様は最初は少し驚かれたようだったが、微かに眉を寄せ、ふいっと顔を背けた。

それはなんだか拒絶されたみたいで、私はいたたまれなくなって、走ってその場を離れた。


薬、フクロウ、いたむおひる
(佐助様が伊佐那海様を)
(好きってことくらい)
(わかっていたのに、)
(どうして胸が痛むの)





120227

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