中編 | ナノ


生徒会室に戻ってからはなかなか仕事が進まなくて、先輩たちが帰ったあとでも生徒会室に居残った。運動部に比べれば行事がないときの生徒会の帰宅は早い。まだ6時をまわったくらいで、夕焼けが差し込んで眩しい。

生徒会広報の記事を黙々と書くが頭の中がごちゃごちゃしていて、なかなか進まない。特に期限が迫っているわけでもないけど、今日やると決めたことだから帰れなかった。ため息をついて机に頭をのせた。桜庭先輩が開けてくれた窓からぬるい風が入ってきて気持ちがいい。もうそろそろ暑くなる季節がくる。心地いい風を受けてだんだんと眠くなってきて、そのまま瞼を閉じた。


***


どのくらい時間が経ったのだろうか。腕の痺れと、頭になにか触れたような感触で目が覚めた。体を起こせば少し間接が痛いし、体が固まった感じをほぐすためにぐぐっと背伸びをした。


「お。起きた」


ひとりきりだと思ってたのに突然声がして心臓が止まりそうになった。しかも、そこにいたのは高尾だった。高尾は隣の椅子に座って、机に頬杖をついてこっちを見ていた。というか、私全く気づかなかったんですけど。

外を見ればもう暗くて、もう7時をとっくに過ぎていた。驚きで1回勢いよく立ち上がって、意味ないって気づいてになって椅子に座るという意味分からない行動をしてしまった。高尾は面白そうに一部始終を見ている。いや、いまさらなんだけど高尾なんでここにいるの。


「姫なにしてんの。ウケんだけど」

「高尾こそなにしてるの」

「んー会いにきた」

「な、にそれ」

「部活見にきてたっしょ」


ああ、やっぱりわかってたのか。頷くと、高尾はなぜか少し眉を寄せてなんともいえない微妙な顔をしていた。そうしたら、なにか言いにくそうにしているから、どうしたのって聞いたら、予想外の答えが返ってきた。


「緑間といいカンジなの」

「え?なに急に」

「だって今日授業中に手握られたり、部活みにきたりしてっから」

「ああ、あれはそういうことじゃなくて」

「じゃあ、どーゆーことなの」


なんか、拗ねてる?高尾はじっと私のこと見ていて視線を外してくれない。恥ずかしいからあんまり見ないでほしい。でも、ちゃんと話さないといけない雰囲気だし、高尾をもう避けられない自分もいる。私は意を決して息を吐いて、高尾に向き合った。


「私、緑間くんのこと好きって言ったじゃん」

「…おう」

「でも、緑間くんにドキドキしなかったんですよ」

「お、おう」

「で、気がつかされたの」

「うん」

「部活見に行ってはっきりしたの」

「…うん」

「私、高尾のこと、好きだったんだな、って」

「っおう!」


めちゃめちゃ嬉しそうに笑う高尾だったけど、私は恥ずかしくて死にそう。でも、私にはまだ言いたいことがあるので、抱きつこうと椅子から立ち上がった高尾から逃げるように私も椅子から立って、高尾の胸を押し返した。言わずもがな高尾くんは不満げである。高尾の顔を見ないようにやや下向きで、話を続ける。


「でもね、高尾がなんで私なのかわからなくて」

「うん」

「緑間くんが高尾に一番近くて、」

「うん」

「私が一番高尾に近いと思ってたのに、」

「うん」

「高尾のこと一番応援してるの私なのにって」

「うん」

「…やきもち妬いた…」

「…うん」

「こんな私だよ…?」

「うん、そんな姫だからいーの」


高尾を押さえていた手を強く引っ張られ、私は強く抱きすくめられていた。抱きしめられた身体が熱くなって、心臓が壊れそうなくらいドキドキしている。今度は私が高尾の話を聞く番だ。


「オレのこと応援してるって言ってくれた姫を好きになった」

「…はい、」

「マジメで笑顔が可愛いって思った」

「恥ずかしい…」

「で、さっきの話だけど」

「うん?」

「緑間はオレたちのエースで、オレが認めさせたいやつなの」

「うん」

「そんでもってオレたちはイチバン目指してる」

「うん」

「まーオレは真ちゃんの相棒なのかな、全然認められてねーけど」

「ふふ、」

「んーだから、姫は変わらずにオレのことを応援してて」

「うん、」

「そこの一番は姫だから」

「…ありがとう」


高尾の背中に回した手にぎゅっと力をこめた。めんどくさくてごめんね、て言ったらぜんぜんって笑いながら返された。本当はわかってたんだよ、緑間くんと私がいるポジションが違うって。なのにやきもち妬いた自分は、自分でもびっくりするくらいに欲張りだった。でも、高尾に全部話したらなんかすっきりして、その欲張りな自分はどこかにいってしまった。高尾に思った以上にはまってしまってるみたい。けど、それも悪くないかな。



「なぁ、姫」

「うん?」

「こっちみて」


高尾が腕の力を緩めたから、少し身体を離して高尾を見上げる。高尾の顔も赤くなっていて、なんか可愛いなって思っちゃった。これは内緒にするけど。


「好きだぜ、姫」

「っ、うん、私も好きです」

「ぶっは、なんでケーゴっ」

「だって恥ずかしい…」

「まあ、これから改めてカレカノとしてヨロシク」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


改めていうことがなんだかおかしくって2人で赤い顔しながら笑った。




触れて確信した恋心
(ね、姫チューしていい?)
(なっだめっ!)
(やっぱ?じゃ、ほっぺでガマンしとく)
(っ、心臓もたない…)




130522

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