放課後になって教室掃除をする数人に混じって、私は掃除の邪魔にならないように教卓で日誌を書いていた。同じ週番だった緑間くんは部活を優先してもらいたくて、高尾と一緒にさっさと部活に行ってもらった。黒板の板書を消すのはきっちりやってもらったけどね!あとはこの日誌を完成させてたら終わりだ。教室掃除の人たちも気がつけば男子が一人また一人と帰っていたみたいだった。ガタガタと下げていた机を元の位置に戻していた女子の一人、みどりが時計をみてはっとした。
「やばっ!今日体育教官室いかないといけなかったのに、もうこんな時間じゃん!」
「えー!まずくない?」
「あとゴミ捨てるだけっしょ?」
「校舎裏まで行ったらアウトでしょ…舞か麻子どっちか変われない?」
「無理だよーうちらの部活時間めっちゃ厳しくて遅刻できない!」
「…みどり、私がゴミ捨てとくよ?」
解決策の見えないゴミ捨て問題に、ついみかねて口を出してしまった。そんなに時間に追われてないのはこの教室で私だけみたいだったし、仕方ないでしょ。しかも、このままじゃ絶対にさっさと帰った掃除当番の男子のグチが始まる。それはそれで時間の無駄だと思う。
「姫マジでいいの!?でも、生徒会は?」
「遅れるって言ってあるから平気」
「姫ー!あなたは神かー!!」
「そんな大袈裟な」
「本当ありがとう!明日リプトン買ってあげる!」
「え、まじで!みどり好き!」
なんて軽口叩いてみどりたちを見送った。明日リプトン買ってもらえるならゴミ捨てくらい余裕だ。とりあえず日誌を提出してからゴミ捨てするのが一番効率的かな。
全くなんでうちの学校のゴミ捨て場は校舎裏とか遠いのよ。なんて、どうでもいいこと考えながらちょっと早歩きで職員室に行って日誌を先生に手渡した。
そうしたら先生から生徒会に頼んでた文化祭の草案がどうたらこうたらって捕まりかけたから、適当に話を切り上げて職員室をでた。あー、今日生徒会室に行ったら先輩に聞いてみないと。
ばたばたと教室に戻ってすぐにゴミをまとめて、燃えるゴミとプラの二つのゴミ袋と、鞄を持って教室を出たら、ばったり高尾に遭遇した。
「松下まだいたのかよ」
「高尾こそ部活してる時間じゃないの?」
「数学の課題出し忘れてて呼び出されてた」
「あーなるほどね」
「つーか松下なんでゴミもってんの?当番じゃなくね?」
「んーかくかくしかじかで、みどりの代わり」
簡潔に事情を説明したら高尾はふぅん、って言って私の手から二つのゴミ袋をひょいと取り上げた。あ、って言ってる間に高尾は歩き始めていた。
「じゃーさっさと終わらせちゃおーぜ」
「って、高尾っ部活はっ」
「へーきへーき!」
高尾はへらって笑う。なんか申し訳ないなあ。少し先をいく高尾を追いかける。
「高尾高尾、どっちか持つ」
「だーめ」
「なんでよー高尾の仕事じゃないのに」
「それは松下も一緒ですー」
「んーじゃあ、燃えるゴミ半分持つ」
多分、プラより燃えるゴミのほうが重いよね。高尾が持たせてくれないなら、半分持つくらいしたい。ゴミ袋を半分持ったら、高尾はちょっとびっくりしたみたいだった。
それにしても高尾はこういうところが、さすがっていうか、ハイスペックというか。だから中学のときから男女問わず人気者になるんだよね。なんて高尾の分析なんてしていたら校舎裏について、さっさとゴミを指定のポリバケツに放り込む。
「ありがとー高尾」
「松下だし、当然でしょ」
ん?私だし?あ、中学からずっと同じクラスで仲もいいからってことかな。高尾はそういうことさらって言っちゃうタイプだっけ。でも、言ってそう、似合う。とりあえず、もう一回ありがとうって言ってみた。
「…松下はさぁ…」
「なに?」
高尾が続きを言おうとした瞬間、高尾が背後から蹴られた。え、どういうこと。一瞬の出来事で何があったかさっぱりわからない。とりあえず分かるのは、いま目の前に居るのは高尾じゃなくて、金髪のコワモテの先輩らしき人だということ。
「高尾テメェなに堂々と部活サボってんだ?轢くぞ」
「宮地先輩痛いっすよー」
「うるせぇ、さっさと部活戻れ」
「へーい。じゃあなー松下」
「あ、うん、部活頑張って!」
嵐のように現れた宮地先輩に高尾はあっと言う間に連れていかれてしまった。やっぱり部活長々と抜けたのまずかったんだ。後でごめんねってメールしておこう。
高尾、さっきなんて言おうとしてたのかな。気になるけど聞くのはなんかちょっと野暮な気がするから聞かないでおこう、かな。
放課後のお助けマン!
(高尾、昨日はごめんね)
(何回謝んだよ)
(だってー宮地先輩めっちゃ怒ってた)
(ブハッ!宮地先輩いつもあんな感じだし)
(課題を出し忘れた罰なのだよ)
(…そっか!)
(まさかの納得w)
130129