中編 | ナノ


昨日、姫とテニスしたって病み上がりで隣の席の睦美に言ったら、かなりびっくりしたみたいだった。


「はぁ?なにそれ、信じらんない」

「まじっだって」

「あの男テニが大の苦手な姫だよ?目に入るだけで走って逃げたくなるって言ってたんだよ?その姫とレギュラー陣でテニス?無理無理!無理に決まってるじゃん!冗談は食欲だけにしてよ!」

「…どんだけ俺らのこと嫌いだったんだよぃ…」


前から睦美の話し方とかリアクションとか見てて姫が俺らのこと苦手だとはわかっていた。けど、それが予想以上だということを今思い知らされた。どんだけ順応性あんだよ、あいつ。つーか、目に入るだけで逃げたくなるとかちょっとショック。

元々、睦美から姫の話は聞いていた。同じ学校で、同じテニス部で、部長だけど全然存在感がなくて、睦美から聞いてなきゃ間違いなく姫のことは知らないまま卒業してた。

自意識過剰じゃねぇけど、俺のこととかレギュラーのやつらのことを好きだと言う女子はよく聞くし、よく知ってる。けど、苦手だっていう女子は姫が初めてだった。そのせいか、姫のことはちょっと前から気になる存在だった。つい目で追って観察してたら、意外と抜けてるやつで、危なかっしいと思った。

視線に気がついて顔を上げれば睦美は移動教室の準備を手に持って、早くしろと言わんばかりの顔をしてた。俺は急いで教科書を持ってから、仁王を叩き起こして睦美と仁王と教室を出た。


「あ、むっちゃん!元気になったんだね!よかったー!」


教室でて早々、話題の姫に出会った。まあ、反応したのは睦美のほうだけど。なんかむかついてる自分がいる。仁王はにやにや俺を見てるのがさらにむかつく。思いっきりガン見してたら、やっとこっちに気づいた。


「あ、丸井くんと、に、仁王くん、おはよう!昨日はありがとうね」


おう、と応えたら安心した顔して友だちんとこに走っていった。てか、仁王にはまだ苦手意識があんのか、緊張してたな。うわ、なんか優越感。今度は俺がにやにやする番だ。ちなみに睦美は信じられない、本当に姫が…とかなんとかぼやいてた。


「あ、そーだ睦美」

「なに?」

「久々に部活いって姫の上達に腰抜かすなよぃ」

「上達というか開花だのう」

「はっ!?ちょっとあの子になにしたのよ!?ちょっと!」


うるさく詰め寄る睦美をシカトしながら俺たちは教室にむかった。あーあ、明日の反応が楽しみだな。そう言ったら、仁王がそうじゃのって面白そうに口をつりあげた。

その日の部活中、睦美の悲鳴じみた叫びが聞こえて、思わず仁王と笑っちまった。





親友の知らない進化
(丸井、これ)
(お!なになに、こんなにお菓子くれんの!)
(うちの部長を目覚めさせてくれたお礼!悔しいけどね!)
(当然だろぃ!やっぱ俺って天才的!)
(なー俺にはないんか?)
(そんなの一緒に決まってんでしょ)
(えー睦美はケチじゃ)
(中学生の財布事情甘くみんなよ)
(てか、丸井!それ男テニ一同様へなんだからね!全部食べちゃダメだからね!)
(はあ!?睦美のケチ!)
(二回も同じことを言わせたいのか、お前!)
(むっちゃー…なんか楽しそうなお取り込み中、かな?)
(そんなことはないと思うが?)
(にににに仁王くん、お、おはようございます)
(…#name1#はてんで丸井以外だめじゃのう)



120408













[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -