部活が終わってすぐに私は学校を飛びたして、電車に乗り込んだ。一時間ほどでたどり着いた場所は、東京。ごちゃごちゃと人が行き交うのを掻き分けるようにしながら歩くこの感じが少し懐かしい。知った道を迷わずに進んでお目当てのカフェに入ると、すでに待ち合わせしていた彼女がもうそこにいた。
「さっちゃーん、ごめん、お待たせっ」
「陽っ、久しぶりー!」
桃色の髪がよく似合う、この可愛い女の子は笑顔で私を迎えてくれた。席について、二人でケーキセットを注文すると、さっちゃんが口を開いた。
「で、きーちゃんと何があったの?」
そう、今日わざわざ東京にまでさっちゃんに会いに来た理由は涼ちゃんとのことを聞いてもらうためだ。私は包み隠さずにこの前のことから今日にいたるまでを全部話した。話してる途中で運ばれてきたケーキセットのミルクティーを飲みながらさっちゃんは相槌をうつ。
「…それで、今日まで避けられっぱなしなわけよ」
「もー!なにそれ!きーちゃんってほんとダメだよね!」
「でも、最初にやっちゃったの私だからねー嫌われてトーゼンていうか」
「陽を嫌いになるのはあり得ないと思うけど…あ、はっきり嫌われたら桐皇きちゃいなよ!」
「うん、話とんだね」
サクッとガトーショコラをフォークで刺して
口に放り込んだ。さっちゃんはどこか納得いってないみたいだったけど、そこは気にしない。
「許してもらえなくてもいいから、もう一回くらい話ししたいよねぇ」
「私がきーちゃんに連絡とってみようか?」
「んーん、大丈夫。近々、無理やりにでもつかまえるから」
そう、こんなことでメソメソするような私じゃない。あっちが逃げるつもりなら、私は追いかけてやるんだから。今までだって、ずっと涼ちゃんの背中を追いかけてきたんだもの、なんら変わりはない。
「そーいえば、さっちゃんさぁ」
「なに?」
「大ちゃん、どーなの?」
「…青峰くんは…相変わらず、だよ」
あ、さっちゃんの顔が曇った。本当あれから変わってないんだ。さっちゃんは重くなった空気に気がついて、慌てたように明るい口調で大ちゃんのグチを言い始めた。本当、大ちゃんのことよく見てるよなぁ、とか感心してしまうほどのグチの内容だった。
その後は、テッちゃんの話とか近況報告とか、お互いの学校がとんなところなのかとか、久しぶりに会った親友とのガールズトークをひたすら楽しんだ。まあ、女子ですから、おしゃべりするだけでストレス解消っていうか、気晴らしになっちゃうんだよね。
「それでね、森山センパイが残念なイケメンってのを目の当たりにしたんだよねー」
「なにそれーおもしろい先輩だね!」
「あ、さっちゃん、ケータイ鳴ってる」
「ほんとだ、ちょっとごめんね」
そう言って、さっちゃんは電話にでた。私は残っていたアイスカフェオレを飲み干す。その間にわかったことは、電話の相手が大ちゃんだということだ。本当なんだかんだ言いながら仲いいよね、なんで付き合わないんだろう。さっちゃん本人はテッちゃんが好きだとか言ってるけど、どうなんだろうなぁ。とか思ってたら、さっちゃんからケータイを差し出された。
「なんか、代われって」
ケータイを受け取って耳にあてれば、気だるそうな声が聞こえた。
「久しぶりだねー大ちゃん」
「よお、陽」
「相変わらず練習してないんだって?」
「俺に勝てるのは俺だけだから、いーんだよ」
「あははー、本当イミわかんなっ」
「あん?」
「てか、迎えにくるんでしょ?さっき、さっちゃんに場所聞いてたじゃん」
「はぁ!?誰も行くなんて、」
「じゃ、早くねー」
そう言って通話終了させる。ケータイを返せば、目の前のさっちゃんは目が点になっている。
「たぶん、もう少しでくるんじゃない?」
「ええ!?来ないよ!そんなヤツじゃないもん!」
「えー?そっかなぁ?」
「ないないっ」
絶対来るよ、だって大ちゃんが一番気にかけてるのはさっちゃんだもん、って言いたいけどややこしくなるから言わないでおく。
それからお会計をして、カフェをでたら外はもう暗くなっていた。
「おっせーよ、ブス」
「え、青峰くん!?」
「ほらー言ったじゃん」
店を出てすぐに、大ちゃんが不機嫌そうにガードレールにもたれながら待っていた。さっちゃんは信じられないものを見るような目で大ちゃんを指差している。
「陽、てめぇ覚えとけよ」
「ん?なにが?」
ジロッと大ちゃんに睨まれるけど、全然怖くない。どうせ帰り道にでも偶然装って送るつもりだったんだろう。中学時代からそうだったし。あー、そういうとこ変わってなくておもしろい。ニヤニヤしてたらもう一回睨まれた。帰り、駅まで二人に送ってもらった。こうしてると昔に戻ったみたいだ。
「さっちゃん、 今日楽しかった!大ちゃんもありがと」
「うん、きーちゃんとなんかあったら連絡してね!」
「黄瀬なんてやめとけばいいのによー」
「もう、青峰くんてば!」
「まあ、とりあえず涼ちゃんに連絡とって、…涼ちゃんだ」
え、え、なにこれ。ケータイ震えたと思ってディスプレイ見たら、まさかの黄瀬涼太からの着信。びっくりしすぎて、二人の顔色を伺ってしまった。さっちゃんは早くでてとなぜか興奮してるし、大ちゃんは面倒くさそうにでろよって言ったので、とりあえず通話ボタンを押した。
ガールズトーク!
(陽っち、いまどこにいた?)
(いま?東京)
(え!?東京!?)
(うん、さっちゃんと大ちゃんといた)
(なんで!?)
130614
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青桃がすきです。