おいかけっこ | ナノ



練習試合当日。私はマネージャーとしていろいろと準備をしていると、監督から誠凛を迎えに行くように言われた。まあ、確かに広いし、言われなくとも行くつもりだったし。体育館を出ようとしたとき、肩を軽く引かれた。振り向けば、そこにいたのは涼ちゃんだった。


「オレ行くっスよ」

「いや、いいよ。マネージャーなんだし、雑用は…」

「いーんスっ!陽っちは笠松センパイのマッサージとかしててくださいっス」


じゃ、と言って強引に涼ちゃんは出て行った。そんなにテッちゃんのこと迎えに行きたかったのか。本当テッちゃん大好きだよなぁ。

にしても、私はどうしようか、笠松センパイのマッサージでもいいけど、笠松センパイ女の子苦手だから試合前にマッサージしたら余計に固くなりそうだしなぁ。誠凛さんが使う更衣室のチェックでもしてこようかな。

そうと決めたら、さっさと更衣室へと向かう。更衣室の掃除はしておいたから、特に問題はない。念のためというか暇つぶしにもう一度軽く掃除をしてみる。にしても、今回の練習試合という名の調整に誠凛を選ぶなんて監督も目の付け所がいいのか悪いのか。テッちゃんもいるし、火神くんって人ちょっとしか見てないけどポテンシャルは相当だった。とにかく、今日なにか起こるような気がしてならない。そう思うとぞくぞくする。

掃除を終えて体育館のほうへ戻ると、もうすでに誠凛のみなさんがいて、なぜかすごくムカついた顔をしてらっしゃった。だよね、コート反面な上に調整だもん。まあ、監督が神経逆撫でするような言い方だったんだろう。にしても、涼ちゃんはユニフォーム着てるってことは出るつもりしてるってことかな。


「オレを引きずり出すこともできないようじゃ…「キセキの世代」倒すとか言う資格もないしね」


また挑発なんかして。って、言ってもその通りなんだけどね。そこで、監督と目があった。


「オイ 誠凛のみなさんを更衣室へご案内しろ!」

「はい」

「アップはしといて下さい。出番待つとかないんで…」

「あの…スイマセン。調整とかそーゆーのはちょっとムリかと…」

「「そんなヨユーすぐになくなると思いますよ」」


テッちゃんと誠凛のカントクさんが声を揃えて挑発を返した。ああ、ホント今日はなにかが起こりそうで楽しみすぎる。だって、私いまあわよくば涼ちゃん敗けるかもしれないとか思ってる。最低だけど、口元が緩んでしまう。更衣室に案内してるところだから、必死にこらえるけれど。


「テッちゃん、がんばってね」

「…いいんですか?僕のこと応援して」

「ふふ、今日は特別」

「あのさ、気になってたんだけど、海常のマネと黒子ってどーゆー関係?」


そう聞いてきたのは確か誠凛の主将の、日向さん。この前は名前もなにも言わずに帰っちゃったし、あの後テッちゃんも説明しなかったんだ。確かに気になるよね。


「陽さんは元帝光中のマネージャーです。彼女はバスケ部全員のケガやコンディション、全てをマネジメントしていたすごい人です」

「ちょ、言いすぎだよ、テッちゃん」

「え、部員全員って…100人以上!?」

「はい。陽さんのスキルも高いですが、ズバ抜けた記憶力と観察力を持ってまして、それを活かした的確な処置は…」

「あーもー!そこまででいーでしょっ」


自分の説明なんて聞いてて恥ずかしくないわけがない。しかも、テッちゃん饒舌に話し出すし、本当辞めていただきたい。更衣室についたところで、無理やり押し込める。ドアを閉め、私は体育館へと戻った。


「彼女がいてくれたら、心強いものはありません」


更衣室でテッちゃんがそんなこと言ってるなんてことも知らずに、私は駆け足で来た道を引き返していた。

それからおよそ10分後、練習試合が始まり、私たち海常はすぐ火神くんの驚異的なダンクに驚かされることとなる。




ごめんね、わくわくしてる
(…黄瀬くんは強いです)
(ボクはおろか火神君でも歯が立たない)
(…けど力を合わせれば…)
(二人でなら戦える)



130607

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