おいかけっこ | ナノ



インターハイが始まり、海常高校は順調に勝ち上がっていった。危なげなく今日準々決勝進出を決めた。

そして、明日の対戦相手は桐皇学園。涼ちゃんにとって初めてのキセキの世代との試合。いまどんな気持ちなんだろう。隣を歩く涼ちゃんをこっそり盗み見た。その表情はいつもと全然変わらなくて、何を考えてるなんてわからない。じっと見過ぎたのか涼ちゃんが私の視線に気がついた。


「どーしたんスか?」

「あー、明日だね、大ちゃんと」

「…うん」


先を歩く先輩たちの集団から距離をとるように、少しスピードを緩めた涼ちゃんに合わせる。


「青峰っちとやれるのは楽しみっスよ」

「…うん、そうだと思う」

「陽っちはどう思ってんスか、実際」

「それは信じてるよ、海常のこと」

「それだけ?」

「…桐皇は怖い相手だよね。さっちゃんはこっちのデータ分析して、先読みは完璧だろうし、なにより大ちゃんを止められない限り、勝つのは難しい、かな」

「負けねぇっスよ、オレは」

「……うん」

「って言っても前とは気持ち違うっスよ?最近、少しだけど黒子っちの言いたいこと分かってきたんス。もちろん陽っちが言ったことも。だから、そんな顔しないで」


涼ちゃんはくしゃっと笑って私のほっぺたをつついた。難しい顔をしていたのが綻んだ気がした。


「ね、涼ちゃん」

「なんスか?」

(海常楽しい?、は愚問かな)

「応援してからねっ!エースくん!」

「当然じゃないっスか!」


その涼ちゃんの頼もしい一言を私は信じる。涼ちゃんならきっと勝てる、涼ちゃんなら大丈夫、私は信じてる。私ができるのは今のところそれだけだから、一生懸命涼ちゃんを一番に応援するね。




花菖蒲を捧げます
(私は海常の勝利を願う)



130622


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花菖蒲(はなしょうぶ):あなたを信じます

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