おいかけっこ | ナノ



夏休みに入って、インターハイに向けて士気も上がる部内。誠凛が桐皇に負けたとき、リベンジできないことに悔しさが滲んだけれど、すでに切り替えて優勝を目指して練習に励んでいる。
そして今日は、マネージャーの仕事の一貫として他校の偵察しに東京に足を運んでいた。近場でいい情報が得られるのだから足取りは軽い。
朝から何校か回ったところで、私は急いで秀徳高校に向かっていた。インターハイに出場しないとはいえ、ウィンターカップには必ず出てくるだろう。情報があるって損はない。

けど、ついつい他の学校で時間を費やしてしまってここに来るのが遅くなってしまった。駆け込んだのはいいものの、まだ練習しているか危うい。なにせ夏休みだし夕方に近いし人気もないし。とりあえず、体育館いってみればいっかなーって思ってたのに、なぜか校舎の周りををぐるぐるするハメになった。ううん、困った辿り着けない。
困っていたちょうどそこに、秀徳の女の子が通り過ぎた。いやもう、速攻で声かけちゃったよね。


「すいませんっ!ちょっといいですか!」

「え?あ、はい?」


私が呼び止めた女の子は綺麗な黒髪を二つに結った、私より少し背の低い優等生みたいな可愛らしい人だった。


「あの、バスケ部ってまだ練習してるかわかりますか?」

「バスケ部ですか?えーと、今日はさっき終わったと思いますけど」

「えーっ!マジかぁ…」

「バスケ部がどうかしたんですか?」

「ちょっと偵察に来たんだけど遅かった、みたいな感じです」


素直に事情を話せば、その子はあぁと納得してくれた。にしても、この子運動部でもなさそうだし、かと言ってマネージャーっぽくもないのに、バスケ部の練習終わったことなんで知ってたんだろう。


「…もしかして、バスケ部とお知り合いですか?」

「はい、まあ、そんな感じです」

「あ、もしかして彼氏さんとか?」

「へぇ!!?」


あ、図星だったぽい。顔を赤くしてわたわたしてる姿すごく可愛いんだけれども。いいなぁ、秀徳こんな可愛い子いるんだ。


「あ、そういえば自己紹介まだでしたよね!」

「確かに、そうでしたね」


恥ずかしさを隠したいのか、話を変えたいのか、なんかよくわからないけど自己紹介なんだ。とか思ったけど、可愛いからいいや。とりあえず、自己紹介しておこう。


「えっと、白藤陽です。海常高校一年のバスケ部マネージャーやってます」

「え?一年?私もっ!私、松下詠っていいます!」

「うたちゃん!よろしくね!」


と、なぜかここで私は可愛い友達ができました。しかも同い年の。え、でも、ちょっと待って。詠ちゃん同い年で、バスケ部知り合いで、そのバスケ部の彼氏って。思い当たったのは気難しい緑頭の彼。


「つかぬ事をお聞きしますが…真ちゃんとお知り合いだったりする?」

「真ちゃんって、緑間くんのこと?」

「あ、うん」

「緑間くんとは、えーと、親しくさせてもらってると個人的に思ってます」


マジか!フラグ立っちゃったくないですか!真ちゃん、真ちゃんなの!詠ちゃんの彼氏って真ちゃんなの!うわわ、なんかすごい今テンション上がってきてるよ。


「え、えっと、詠ちゃんの彼氏って、」

「陽?」

「…真ちゃんっ!」


呼ばれて振り向けば、まさに話題の真ちゃんがいた。相変わらず仏頂面ですこと。真ちゃんは部活終わりみたいで、エナメルのバックを肩から下げていた。


「あ、緑間くん。お疲れさま」

「ああ。それよりなんでお前たちは一緒にいるのだよ」

「さっき友だちになった!」

「お前はまた、はぁ、」

「なんでため息」

「あ、やっぱり二人は友だちだったんだ」

「うん、同じ中学だったの」


ねー、って言ったのに真ちゃん相変わらずのツンツンっぷりで、ノってくれなかった。いや、それよりも私は真ちゃんと詠ちゃんの関係が気になってるんだった。


「ね、詠ちゃんの彼氏って、もしかして真ちゃん?」

「は?」

「ち、違うよっ!!」

「え、違うの?」

「ザンネンでしたー、詠ちゃんの彼氏はオレでしたっ」


そう言って真ちゃんの陰から現れたのは、確か鷹の目を持つPGの高尾くん。高尾くんは人懐こい笑みを浮かべている。確か高尾くんはコミュ力が高くて、真ちゃんとやっていけてる数少ない人だったはず。


「どーもー、高尾和成でっす」

「あ、どーも、白藤陽です。真ちゃんがいつもお世話になってます」

「おい、陽お前はオレの保護者かなにかのつもりか」

「真ちゃんが名前で呼ぶ子レア!ね、詠っ」

「うん、そうだね。仲良しさんなんだね」

「…そんなことないのだよ」

「えーツンデレなんだからっ」


バシッと真ちゃんを叩けばジロッと睨まれた。詠ちゃんはびっくりしてたけど、高尾くん爆笑だ。こんなこと中学のときは日常茶飯事だったから私はしっくりきている。


「まー立ち話もなんだから、みんなでメシ行こーぜ」

「あ、いいね!いこいこ!真ちゃんと詠ちゃんも!」

「いいの?」

「…仕方ないのだよ」

「よし決定、行くよーっ」


おーと高尾くんがノってくれて、私たちはぞろぞろとご飯屋さんに向かった。この後、私はこの三人組に真ちゃんが溶け込んでいるのことに、いたく感動してしまったのでした。





トライアングルのその先
(これからも、真ちゃんよろしくね)
(そりゃ、モチロン!)
(だから、陽はなんなのだよ!)
(詠ちゃんアド交換しよ!)
(うん!)
(おい!)



130618



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ごめんなさい。本当にただ詠ちゃん出したかっただけです。夢主と仲良しさんになってほしかっただけです。あと、読んで下さった方はわかったと思いますが、中編の高尾夢の主人公ちゃんです。高尾と付き合ってからちょっとしたくらいの話です。









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