夏も終わり、肌寒くなった時期。風もひゅうひゅうと冷たく吹き付けてくる。


「寒い」


学校から帰宅途中の姫は思わず身震いしてしまう。そんな姫のポケットに入っている携帯が鳴り、ディスプレイを見ると一応彼氏である忍足侑士の文字。姫は通話ボタンを押して電話にでた。


「もしもーし」

――愛しの侑士くんやで♪

「切っていい?」

――えぇ!?ちょ、待ちぃな!それはひどいやん!

「あーはいはい。で、何か用?」

――ん、いやぁ寒いな思て

「そうだねぇ。…で?」


忍足の話したい内容がよくわからず、姫は寒さのため少しいらだって先を促す。


――あったかいん欲しいんわ

「それはみんな思ってるから。てか、寒いから切っていい?家帰ったらまた電話するから」

――えー切ってまうの?

「うん。じゃ、」


寒さに耐えきれず姫は携帯を耳から離し電話を切ろうとボタンに指をあてた。
「もーほんま、冷たいなぁ」

「ふぇ…!?」


聞き慣れた関西弁が聞こえたかと思えば、後ろから抱きしめられる。


「でも、そんな姫も好きやで♪あ、もう電話切ってもええよ」


忍足はびっくりして固まっている姫の代わりに電話を切った。


「ゆ、侑士…?」

「ん?」


姫は首だけ少し後ろに振り返る。


「………痴漢」

「そんなこと言うなやぁ〜悲しくなるやん」


忍足は腕の力を強めた。それに姫は頬を緩める。


「あったかいな」

「…うん」


姫は諦めたように忍足に身を任せた。


「……でも、やっぱり寒いから帰りたい」


姫の言葉に思わず忍足は笑ってしまう。


「せやな、帰るか」


忍足は姫の後ろから隣に移動する。


「侑士ー」


姫はおずおずと忍足の手に自分の手を絡ませると、それに気づいた忍足はしっかりと握りしめた。


「侑士あったかーい」

「姫もあったかいで」


二人は顔を見合わせるとクスクスと笑った。






ぬくもり
(冬になったら人肌であっためてや)
(やだ)
(男のロマンやろ!)
(知るか、ばか)




081111

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