「ユウ、行くの?」

「……あぁ」

「そっか」


なんて可愛くない台詞なんだろう。大好きでしかたない人が行ってしまうっていうのに、
この家にいるときは着てほしくないとワガママ言ったエクソシストの服にユウは袖を通していく。私はソファに体育座りで座り、ヒザに頭を乗せた。ユウがエクソシストへと戻るのを見たくなくて。
所詮、エクソシストと一般人。私にはなにもできない。引き止めることができない私だから涙さえ、ユウには迷惑なんだ。
私は何もできないで、家を出る準備をするユウの後ろ姿をぼんやり見た。ユウがいなくなったとき一緒にいた時間だけが私を満たす。
そうやってまた来るかもわからない人をこの家で一人待ち続ける自分がいる。一見健気だけど、それ以上にバカな自分。だけど、それだけユウが好きだってことなのかな。なんか照れくさいや。


「おい、」

「んー?あ、髪ね。ここ座って」


私の隣をポンポンと叩けばユウは大人しく座った。さらさらのユウの髪を丁寧にとかし一つに纏め、後頭部あたりの高さにしヒモで縛った。


「はい、出来上がりー」



いつもならここで「ん」とかなんとか言うのに今日に限って無反応だった。


「ユウ?――っ!?」


声をかけたら急に押し倒され、強引に唇を奪われた。


「んっ!!」


突然のキスで呼吸を奪われ、苦しくなってユウの肩を叩くと名残惜しそうに唇を離してくれた。


「はぁ、…ユ、ウどうしたの?」


呼吸を整えながらユウに質問する。ユウはうつむき加減だ。


「姫はオレが嫌いか?」

「は?」


なんでいきなりそうなるのだろうか。 ユウの言いたいことがわからなくて、ただじっとユウを見つめた。


「……オレが行っても構わないのか?何も思わないのか?」


そう言うユウの顔は辛そうで、見てるこっちまで苦しくなった。そんなユウの辛さをなくせるように、精一杯優しい声で返した。


「そんなことないよ」

「なら、なんで何も言わねぇんだよ」

「え…?」


今のは聞き間違えではないだろうか。しかし、それにしては耳に残ってしまった。


「だから、なんで何も言わねぇんだよ。姫はオレがいなくても平気なのか?」

「っ!そんなわけないでしょ!!平気なわけないっ…!ユウが好きだから、迷惑になりたくないから、何も言わないんだよ!!」

なによ人がせっかく答えてやったのに驚いた顔は一瞬ですか。そして、その笑みは何ですか。かっこいいじゃんか、こんちくしょう。


「姫、」

「何よ」

「愛してる」

「なっ!…それはズルい」


いつもは好きさえ言わないくせに!満足そうな顔するもんだから悔しいくてキスしてやった。そしたら、ユウの珍しい顔が見れたからよしとしよう。
それにあの言葉がもらえたから、寂しい時間もきっと大丈夫、かな。




すれ違いの気持ち
(行ってらっしゃい)
(あぁ、行ってくる)
(ちゃんと帰って来てね)
(当たり前だ)



081017

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