『俺、イタリアに行くんだ』
『行ってきます』
ツナからそう言われた卒業式から、もう5年が経とうとしている。その間の連絡なんて一切なかったし、連絡する手段も知らない。
「こんなんじゃ、また泣きそう」
あれから時間は経っているというのに私の涙は枯れるなんて知らない。卒業式の日に全部置いてこれたらよかったのに。
「あー!ダメだダメだ!散歩行こっ!」
気分転換で並盛の街並みに出た。ずっと歩いて行ったら並中の前に来ていて思わず立ち止まった。
「ツナと初めて会った場所‥」
私はふらっと中学校に立ち寄った。日曜日の夕方で学校には生徒は誰もいなかった。けど、用務員さんが顔なじみだったから特別に校舎を見てまわれることになった。
「2-A‥」
初めてツナと同じクラスで初めて出会った日、ツナは声かけてくれた。
『俺、沢田綱吉。よろしくね』
ツナの笑顔は照れていて可愛かった。それからすぐに仲良くなって、山本とか獄寺とも仲良くなった。
教室をでてすぐ窓の下に中庭が見える。
『俺、姫が好きなんだ!』
あの時は京子が好きだと思ってて、ツナも私が山本を好きだと思ってて、勘違いとすれ違いに耐えられなかったツナが告白してくれたんだっけ。顔、真っ赤だったな。それから、美術室、図書室、調理室、あと応接室、中学校の思い出の場所を巡って、ツナたちとの思い出辿った。
私は行きたくなかった屋上にも足が向いていた。
「うわ、久しぶりぃ」
屋上は夕焼け色に染まっていた。
まるで、卒業式の日みたいに。
『ツナ、どうしたの?』
『姫にどうしても言わなきゃいけないことあって』
『なに?』
『俺、イタリアに行くんだ』
『え‥?うそ、でしょ?』
『ううん、本当。今日の夜に行くんだ、』
『急すぎるよ、』
『ごめん。だけど、姫には最後に言うつもりだったんだ』
『なん、で』
『姫に引き留められたら決意がゆらぎそうだったから』
抱きしめるツナの力は少し痛かった。けど、このまま離れなきゃいいのにって思ってた。
『ほんとにごめん、』
涙を拭ってくれた唇は震えてた。
『行ってきます』
ツナと触れるだけの優しいキスで別れた。思い出が一気に溢れでて、私は屋上で泣き崩れた。
「あの時、別れようって、言ってくれたらよかったのに!」
言ってくれなかったからまだ恋人同士な気がしてしまう。
「ばいば、いって言ってくれたら…!」
行ってきますって言ったから、帰ってくる気がして、
今、あなたはどこにいますか?
今、あなたは何をしてますか?
私は、今、
頭の中は、君一色
(私は今でもツナが好きで、好きで、忘れられない)
090126
title:Aコース