真夜中にチャイムが鳴ったかと思えばドアが開く音。一言も入っていいなんて言ってないし、現に私はチャイムが鳴ってからソファから動いてない。そんなのお構いなしに入って来るなんてアイツだけ。
「いんならさっさと出てこい」
さっさと入ってきたくせによく言うよなぁと思ってたら、ネクタイを緩めるながら偉そうにドカッとそいつは座った。
「いらっしゃい、リボーン」
「おう」
リボーンはふう、とため息をついてソファに持たれた。
「あぁ、コーヒー淹れるね」
「いらねぇぞ」
せっかく立ち上がったのに手首を引かれて逆戻り。というか、リボーンの腕の中。大好きだけど、大嫌いな腕の中。リボーンから香る甘ったるい匂い。ワイシャツの影に見えた口紅。首筋についた赤い痕。ずいぶん独占欲が強い愛人さんだったのね。
「姫、なに考えてんだ」
「んっ」
リボーンに強引にキスされて、押し倒された。
「俺しか考えらんなくしてやろうか?」
自信たっぷりで笑って、唇を奪うと今度は服の中に手が入って来た。
「リボーン、」
「あ?」
「一人抱いただけじゃ足りなかったの?」
今、私はどんな顔してるんだろう。リボーンはすっかり手を止めて見下ろすだけ。
「…なんてね、冗談」
無理矢理すぎる言葉と笑顔だと思う。リボーンにこんなことしても無駄なのに。
「妬いてんのか」
「どーでしょー」
クスクス笑ってみせるけど内心めちゃくちゃ妬いてる。私の知らない他の愛人たちに。そんなことこれ以上気づかれたくなくて、するりとリボーンの首に腕を回した。
「リボーン抱いてよ、」
貴方にそう言えば、口づけをくれた。
錯 覚
(この時だけは私が一番なの)
(所詮、私も他の愛人と同じ)
(手に入らない貴方を愛してしまった、)
090112