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「よっし皆、いくぞー? …オベリスクの〜?」
「「きょしんへーい!」」

パシャ、と一瞬の光とともにシャッター音。カメラを持ったヨハンは満足そうに頷いてオッケー! と声をあげた。
童実野駅からローカル線に乗り込んだ彼らは電車の廊下を遮って集合写真を撮っていたのである。シャッターが切られたのを確認すると各々はお喋りしながら席に戻った。
ちなみにこの電車は向かい合わせで座る4人掛けの座席となっているため、一行を2分割にして座ることになった。
乗客は他にもいたが、学生だということで大目に見ているのか煙たそうな顔をしたものの何も言わなかった。すみません、馬鹿どもが迷惑かけます。


肩から提げたショルダーバッグにカメラを詰めなおして、ヨハンは遊戯の向かいに座る。遊戯の隣には城之内が、そして城之内の向かいには鬼柳の満足弁当の山が置いてある。


「なんかよー…お前の鞄ケータイやらカメラやらごちゃごちゃだよな」

「ん? ああこれかぁ、これはな、すぐ周りの景色が撮れるようにしてんだ!」

ヨハンの手には、画質がよいと評判の最新のケータイが握られていた。へーえ背景写真とか好きなのか、と素直に感心した城之内にヨハンは恥ずかしそうな笑みを浮かべて何か言いたげに口を動かしていたが。


「おいテメェら、ギャーギャーうるせぇんだよ寝れねぇだろが!」
ふ、とその和やかな空気を鋭い声が遮った。ひとり、この騒がしい奴らに憤りを覚える乗客もいたようである。
びりびりと窓ガラスを震えさせたその声の主は…


「ばっ、バクラか!?」


白く長い髪の毛、うさ耳のような刺々の触覚、……宿主とは大違いの鋭い眼。
城之内達から少し離れた席からひょっこりと顔を出したバクラは、声を聞くなり鼻を鳴らした。
(ちなみに他の乗客たちは「お前のほうがうるせーよ」と見事なシンクロを脳内で完成させていた)


「はっ、誰かと思えば頭の悪い城之内さんじゃねえかよ。補習じゃねぇのかぁ?」

「んだと、バクラテメェ!!」

その言い様に城之内がさすがに眉を寄せる。いちいちこいつは言うことが人を腹立たせるのだ。城之内が身を乗り出した、その時。

ドン★とお馴染みの効果音が、電車内に流れたのである。


「城之内くんを侮辱するのは許さないぜBA☆KU☆RAAAA!! お前こそ何しに来たんだ!」

今の一瞬にチェンジした王様がいきなり城之内の隣でやかましい声をあげた。


「オレ様がどこに出掛けようと問題ねぇだろ? 今は夏休みなんだしよ。大体テメェらはどこに「なぁ、お前マリクと遊戯さんとお揃いの首かざりどこやったんだ?」

十代がバクラの話を完全にぶったぎって自分の首を指さす。そう、バクラの首にいつもかかっている千年リングが今日ばかりは見当たらない。

いつもは「あぁ?」とか完全に不機嫌な声が返ってくるものだが、今日のバクラは違った。急に狼狽えるような間を見せて視線を泳がせたのである。






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