| ナノ


「そういえば今流れてるこの曲…そろそろ野球の試合か?」


教室のなかに流れこんできた吹奏楽の演奏を聞きながら遊星が聞いてきた。曲名は…何だったか忘れた、でも野球の応援ではお決まりのポップスだな。


「そうだぜ、いいよなぁ吹奏楽部はよ。野球部の応援の練習で補習免除とかずりぃよな本当!」


「まぁ…むぐ、ふいほうがくぶはれんひゅうもたいへんばからな」


「何だって? 飯食いながら喋んなよ…お前、また先公に見つかって没収されるぞ、弁当」


「ああ、あの時ばかりは泣いた」

飯を飲みこんだらしいちょっとした沈黙の後に遊星はうなずいた。だったらやるなよ、なんて言ってもまあ聞きやしないだろう。
こいつは孤児じゃないが何故か孤児院の出身らしく、いつも飯が食えるという状況じゃなかったらしい。だからもりもり飯が食える今が嬉しくて仕方ないそうだ。まあ…俺も気持ちが分からんでもねえけど。



そんな俺たちの部活はというと、…まあ簡単に言っちまえば帰宅部だ。要は無所属っつーことだな。

俺は生活費他諸々を稼ぐためにバイトしてるし、遊星はライディングデュエルとかいうやつのために部活には入っていない。学校にはデュエル関連の部活はねえから、まあそうなるだろう。


十代はなんか家庭部(試食専門って自分で言ってたからそうなんだろう)にいたけどシャケ召喚しすぎて追い出されたって伝説が残ってるらしい。意味わかんねぇうえに、本当かどうかすらわかんねーけど何故かあいつならやりかねないとは…思う。


「あーあっ、今思えば何でもいいから部活入っときゃあよかったぜ。学生の青春ってやっぱ部活だよな〜」


大量の蟹とご飯を目一杯頬張り、ごくりといい音をたてながら飲みこんだ遊星は今度はD・ホイール専門雑誌を取り出し、バレないように教科書に重ねた。…こいつ、よく見たらノートすら出してねーじゃねえか。というかこいつ頭いいはずなのに何で補習やってんだ、そういや。


「お前はバイトがあるだろう。俺もライディングデュエルで忙しいしな」

「おう、最近生活費が苦しくてよ……あ、お前最近走り屋で鳴らしてるらしいな? よく名前聞くぜ」

「ああ。この前謎の豆腐屋とデュエルした」


「まじかよ!! それって伝説の走り屋じゃねーのか!?」



そのころの授業はといえば、

「夏草や 岩にしみ入る 蝉の声」を


「なつくしゃや いわにしみいる しぇみのこえ」


と読んじまったマリクが「まさにDEATH★GAME」と叫んで古典の教科書を闇に葬ったぐらいしか変化は無かった。



…そういえば結局、ノートは借りれそうにねーな。




**



そう、物語はまだ始まりの始まりでしかない。



「いいよなぁ、吹奏楽部はよ。野球部の応援の練習で補習免除とかずりぃぜ」


城之内のこの愚痴が、全ての始まりになるのだ――



章【




++++
補習カルテット=城之内、十代、遊星、闇マリク。

補習が全学年共通というのは、田舎の学校だからです、そうったらそうなんです

あと城之内くんは吹奏楽の補習免除に拗ねてますが、そもそも吹奏楽の面々は優秀なので補習の人がいない、ということを彼は気付いていません。

1/6 加筆修正





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -