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「下りの電車来るの1時間後だって。…どうしようね」
「ケータイも圏外で使えないしなぁ」


まさにフィールド魔法『田舎』、地平線の彼方まで田んぼ、田んぼ、たまにト〇ロがいそうなもこもこした森。そんなザ・田舎のど真ん中でデュエリストたちは途方に暮れていた。

他に交通手段も無いのでヒッチハイクを試みようにも、車といってもコンバインぐらいしか見当たらないくらいの田舎だし、電車を頼るしかない。弁当運送班は皆げんなりした顔になって己の睡魔を恨んだ。この一行に何故かWバクラもついてきて、狭いホームはとても窮屈そうだ。

しかしまだミッションは続いている。これを失敗させたら補習なんかじゃすまされない大変なことが待ち受けているだろう。何せ吹奏楽にいるのは海馬にジャック、三天才に万丈目などただものじゃない人物ばかりだからだ。

海馬なんて財力にかこつけて何をしでかすかわからない。殺人鬼雇ってけしかけてきたり、人を集めておいて島ごと爆破したり、死の体感とか言って箱に閉じ込めてきたり……


「あいつならやりかねねえぜ…」
「どうしたんだぁ城之内? 顔が真っ青だぜ」
「いや、ちょっと命の危険が」



結局、「1時間も待ってらんねぇなら線路歩けばいいじゃねぇか」というバクラの提案で一行は線路を逆に辿りはじめた。

しかし完全に登った夏の太陽は一行の想像以上に強い日光を放つ。ものの100メートルで汗だくの彼らはもうこの選択を後悔していた。東北の夏は暑い。これだけ暑いくせに冬は死ぬほど寒い、理不尽な地域だ。


「しっかし今日は暑っちいな。俺、こう日が照ってるとすぐ焼けるんだよなー」

「あ、僕日焼け止め持ってるよー、貸す?」

「お。俺にも貸してくれ!」

「なんだ十代もヨハンも女子かよ! 男ってのは焼けてたほうがカッケーだろ」

「いや、城之内くん、肌色が変わるだけじゃなくて荒れちゃう人もいるわけだから」

「そうだな、テメェの肌は繊細さなんて欠片もありそうにねぇもんな」

「んだとぉバクラテメェ!!」

「落ち着け城之内、僕が戦術をサポートする!

色黒で何が悪い!

「いらねぇっつってんだろ!!」

「グハァッ!」


そんな風にぐだぐだと日焼けに関するくだらない議論を喋っていた一行は、遠くからがたんがたんと車輪の音が近づくのを全く気にとめてもいないようであった。最初は米粒ほどにしか見えなかったが、どんどんその車体は近付いてくる。


「だいたいなんだよテメェは! 中身がアテムなんだかわかんねぇけどよ、いい加減元に戻れよ!」

「いたたたたた、城之内やめろ、ピアスは引っ張るな」

「おい城之内、主人格しゃまをいじめるなぁ!」

「⊂二二( ^ω^)二二⊃ブーンブンシャカブブンブーン♪」

「なぁ十代、今日の晩飯なんだ?」

「んー…あ、今日は確かエビフライの日だぜ!」

「久々のエビフライか! やったぜ!!」

喧嘩をおっぱじめるものや流行りのポップスを歌うものや献立に高揚するものやら収集のつかない状態になってきた一行。いつもどおりのカオスっぷりである。遊星は隣を歩いていた遊戯に、こっそりと聞いてみた。


「…遊戯さん、止めなくていいんですか」

遊星はAIBOこそ全ての抑止力と考えていた。その考えはあながち間違いじゃない、闇AIBOさえ呼びこめればこいつらなど3秒で爆☆殺だ。

「うーん、そうだね。そろそろあれ使ってみるね」

「『あれ』とは…?」
AIBOは遊星を半歩ほど下がらせると、1枚のカードを高々と掲げて宣言した。






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