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『お、お前もカレーか。お揃いだな☆』

「う、うっせぇ!! 誰がお揃いだ、俺様は……そうだ肉じゃが! 肉じゃがを作んだよ!」

そうなんだ、肉じゃがって確かにカレーと材料はあんまり変わんないけど……あれ、でも糸こんにゃくが無いなぁ。
糸こんにゃくないとちょっと物足りない…よね? 肉じゃがって。


「うーん、肉じゃがにするなら糸こんにゃく入れたほうがいいよ。僕ん家にあるから分けてあげる!」

ボクが笑顔で言うと、バクラくんは「う、」ってたじろいで一瞬の逡巡を見せた。でもすぐいつものようにぶっきらぼうに突き返す。

「っ、糸こんぐらい家に残ってるに決まってんだろ!!」

『俺は知ってるぜ☆昨日お前の家はすき焼きだったんだろ?』

「あぁ!? なんでテメェがそれを知ってんだ」

え? なんでそんなこと知ってるのもう一人のボク。バクラくんが目を見開いてもう一人のボクを見るあたり、図星みたい。

彼は理由は言わぬまま(というか人の話を聞かずに、だね)、さらにバクラくんに畳み掛ける。

『残念だったな! すき焼きで使った「糸こんにゃく」は墓地から戻すことはできないぜ!』

「なんでもデュエルで考えちゃいけない、もう一人のボク!」

「あああもう黙れ!! 宿主というかオレ様が腹減ったから帰るからな、畜生覚えとけ遊戯!」

バクラくんはDEATH、DEATHとひたすら呟きながら走り去っていった。途中、彼の携帯が「めざせポ〇モンマスター!」を奏でたけど、それに構わずバクラくんは宵闇へと消えゆく。


小さくなる背中を見送るのは、今日二度目だ。


「素直じゃないなぁ…まあバクラくんらしいや」

『ああ、あいつツンデレなんだな!』

そのとき。ぽつり、ボクの頬に落ちる雨の雫がひとつ。


「うわぁ、降ってきちゃった! 急がないと」


家までもう少し。走ればきっと濡れないはずだ。

先程見たトランペットの金色を思い出しながら、ボクは灯りの乏しい住宅街へと走りはじめた。




一方その頃。


――こんな貧相な弁当じゃ満足できねぇ! もっと豪華にして満足してやるぜぇええ!

弁当屋「サティスファクション」ではそんな声が夜中まで響いていた。


 
【次回予告】

杏子「物語はついにスタート、
ってえぇっ? 弁当を届ける前に吹奏楽が応援に出掛けちゃった!? それじゃあ皆おなかがすいて倒れちゃうわ!

でも補習を受けたくない城之内含む古典ボーイズが見つけた一筋の光! 城之内たちがこのチャンスを逃すはずないわよね!

次回、遊☆戯☆王5DX外伝『SWING★DUELIST』第一話、「中毒ラプソディー」
デュエルスタンバイ!」




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次からついに本編入り。
D・ホイール二人乗りはロマンだと思うの。





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