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::粉砕解放バッター(凌+馬)


朝靄に浸ったような、眠気で濁った視界が覚めるくらいその金属バットは冷えきっていた。手の中にあるそれを確認するように、握りしめる。確かな重さと反発。あとは簡単だ。振り下ろすだけで、壊れる。物も命も、砕け散って消える。人なんて一瞬の反動と、頬にかかる血やら生臭い液をやり過ごせばすぐだ。なんともあっけなく、そいつの身体に積み重なった時間は無に変わる。
最初は復讐のつもりでやっていたそれを享楽と感じるようになったのがいつだったかわからない。
凶器を見て老いぼれた芸能人が『壊すことが好きなのだろう』と眉を寄せた。死骸を見てゴシップ好きなニュースキャスターは、『これは犯人による、身勝手な解放です』と唾を飛ばした。

俺にだって理解できねーことに知ったような口を利くな、と。

「……俺はアンタのこと、異常だって思ったことなかったぜ」

今目の前にいるそいつに、吐き出したかった。
偽善か好奇心か知らないが、俺の手にある凶器を「それ、人殺したやつか? そんなのやめたほうがいいぜ」と指さしている。その偽善に満ちた、模範解答のような口調が耳障りだった。




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出た、シャークさんのマジギレコンボだ! という話です。



2011/10/03




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