小説 | ナノ


「……なあ、明日さ……予定とかあるか?」
「べつに無いけど」
「じゃあさ、……い、一緒に夏祭り行かね?」
「いいよ」

夏祭りにオレは勇気を出して石田を誘った。
返事はあっさりとしたもんだが、オレは緊張で汗びっしょりだった。
クラスも別々になり、会う機会が減ってからオレは気づいた。
石田のことが好きなんだと。
減ったといっても、いつものメンバーで遊びに行くことは変わらないが。

「明日、石田ンちに迎えに行くからな」
「うん、わかった」

それだけ伝えてクラスに戻った。


―――次の日
朝から迎えに行くまでのあいだ、そわそわして落ち着かないオレを藤野は不審そうに見ていたが、今はそんなことを気にしてる余裕がない。
夕方、石田の家の前で深呼吸してからインターホンを押す。
返事がしてドアが開いた。

「おまたせ」
「石田、浴衣なのか」
「ああ、これ?あたしはいいって言ったけど、いとこに無理やり着せられた」

照れくさそうに笑って横に並ぶ。
こんなとき、気のきいた台詞でも言えればいいが、オレはそれ以前にいっぱいいっぱいだった。

「なんかね、デートなんだって」
「……え!?」
「ユズピと一緒に行くって言ったら“それってデートじゃん”ってなんか盛り上がってた」
「そ、そうなんだ」

驚きすぎて変な声をあげてしまった。
嫌でも意識してしまう、今2人っきりだってことに。
そうこうしてるうちに神社の鳥居が見えてきた。

「さすがに人多いな」
「あたし晩ご飯抜いてきたのだ」
「オレも腹へった、なあ、なに食う?」
「焼きそばとフランクフルトは絶対だな」
「そっか、じゃあ買ってくる」

前に貰った券をもって列に並ぼうとしたら、石田に腕を掴まれた。

「あたしも行く」
「石田はそこで待ってろよ。足つらそうだぞ」
「……わかった」

しぶしぶ離れて近くの木にもたれかかる。
慣れない鼻緒に苦戦してたことは途中から気づいてた、だからしばらく休ませることにした。
長い列を並び、買ってきた物を手に石田のもとに戻る。

「ユズピ、ありがとう」
「……オレも同じの食おうと思ってたし、ついでだからな」

オレはつい照れ隠しで素っ気ない態度をとってしまったが、石田は気にせず焼きそばとフランクフルトを受け取る。
屋台の焼きそばは家で食うやつより美味いな。
なにげに失礼なことを思いながら食べ続けた。

「お腹いっぱいだな。ちょっとぶらぶらする?」
「それより足大丈夫なのかよ」
「うん、もう治った」

本当か?と一瞬疑ったが、足を引きずってるようすはない。
いつも通り歩いている。
回復早いな石田……。

「………」

しばらく歩いてたら綿菓子の屋台が視界に入ってきた。
ちょうど甘いものが欲しくなってきたとこだが、中3で綿菓子なんて、かなり恥ずかしい。
ましてや石田の前で、なんてカッコ悪すぎる。

「――ユズピ?……券、貰っていい?」
「え?いいけど、なに食うんだ?」
「甘いもの」

まっすぐ綿菓子の屋台に行ってしまった。
まさか、オレの考えてること分かったのか?
内心ドキドキしてると石田が戻ってきた。

「はい」
「……え?」
「あたしだけだと食べきれないから半分こしよ」

にっこり笑って綿菓子を差し出す。
さすがに直接口をつけるわけにもいかないので、ちょっとだけちぎって食べた。

「……甘い」
「砂糖のかたまりだからな」

石田らしい言葉に思わず声を出して笑った。


(あとがき)

初ユズ石。
中学生らしく可愛いかんじの話を目指しました。
うちの町内では会費で券が配られるんですが、あたしンちの町内はどうなのか分からないので同じ設定にしました(汗)


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