小説 | ナノ


あれから1日経って、お互いに気恥ずかしいような、気まずいような、微妙な空気が流れていた。
ただ、今まで通り一緒にいることは変わらない。

「で?どうだった?」
「うん、まあまあかな」
「なんか雰囲気が変わったかんじするね」

いつものメンバーがニヤニヤしながら2人を見守っている。
藤野は必要以上にベタベタしなくなり、ユズヒコはあんまり目を合わさなくなった。
確実に今までとは違う方向に意識し始めている。
石田は密かにほくそ笑んでいた。

「よー、ユズピー!」

小山田が窓側から顔を出して手を振っている。

「あ、藤野!昨日すっぽかしただろ!俺ずっと待ってたんだぞ」
「わりー。でも体育館裏行ったけど、お前いなかったぞ」

まさか石田の告白現場に偶然居合わせたとは言えない。
小山田もあそこにいたのだろうか。

「あー、トイレ行ったときに入れ違いになったのかも。あん時めちゃくちゃヤバかったからな、腹が」

1時間はこもってたぜ!と、なんの自慢にもならないことを、自信満々に言う。
昨日のことを思い出したのか、ユズヒコは居心地悪そうにそわそわしている。

「結局なんの用だったんだ?」
「そうそう、藤野が好きだっていうアイドルの写真集手に入れたからさ、一緒に見よーと思って♪」
「………写真集?」

ピクリ、と反応を示した。
その横で慌てる藤野。

「な、なに言ってんだよ!」
「えー、なんだよ。せっかく持ってきたのに」

見せびらかすように、写真集をひらひらさせて2人に近づいた。
もちろん周りの注目を浴びながら。

「ちょっと見せて」
「お!珍しいな、やっとユズピも興味湧いてきたか」

ガッシリと肩を抱いて、聞いてもないのにオススメのページを教えてくる。
だが、ユズヒコの思考はまったく別のとこにいっていた。

「んー、なんかようす変じゃね?」
「あれは多分、藤野はこーいうタイプがいいのか、みたいな余計なこと考えてる顔だな」
「石田すごーい!なんで分かるの?」

3人が盛り上がるなか、1人焦る男がいた。
藤野だ。
ユズヒコが写真集に興味を示したことも、小山田が肩をおもいっきり抱いてることもぜんぶ気に入らなかった。
理由は、分からない。
また、胸の奥がムズムズして気持ち悪くなった。
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