side:K

「あたしはいっつも何か取りこぼしてんの。笑っちゃうよねー……あははははは」

顔を赤くしたリーダー様は笑う。
床に散乱しているのは今の時代、貴重品といっても過言ではない酒の瓶だ。
ワイン、大吟醸、ウオッカ、ブランデー、ウイスキー、ポン酒、以下略。
いったい何処から持ってきたのか、明らかに支給されてはいないものまでずらりと勢ぞろい。ここはいつから酒屋になったのかと疑いたくなる光景である。……まあ中身は空だが。
……………空、なの、だ。
この夥しい量の酒を、まさか一人であけたのか。まさかまさか、とコウタはリーダー様にちらりと視線を向ける。

「一回で懲りろってんだってさー、何度も何度も取りこぼしてさー、もうやんなっちゃうって話でさーうふふふー」

リーダー様は笑いながら言う。
多分酔っているんだとコウタは思う。
こんなに自分について話しているリーダー様なんてついぞ見たことがない。バカだのアホだの言われている割には気遣いの人である、ということを同僚として同部隊員として部下としてそしてそして友人としてコウタは良く良く知っている。
コウタの家族のこと、ソーマの対人スキルとその向上のこと、アリサがツンデレであるか否か、リンドウさんとサクヤさんの子どものこと(名前はもう決まってるらしい、レンというそうだ)、その他にもたくさん会話はしているが、何をどれだけ話そうと決してリーダー様の話にはならない。
意図的に避けているのか、無自覚なのかはコウタにはわからないが、リーダー様のお口からリーダー様について語られたことは一度もなかった。

「いっつも後悔してんのにさー、何か一個絶対取りこぼすの。絶対に、どんだけバカなのあたしってさー……」

だから、いったい何を取りこぼしたのかコウタにはいまいちわからない。
何をどれだけ取りこぼしてきたのか。
何もわからないことにコウタは泣きたいような気分で、リーダー様を見る。

……コウタがリーダー様について語れるようなことはあんまりない。

大体同世代くらいの女の子。
明るくて感じが良いムードメーカー。
たまにとんでもないところで常識を知らない(そしてアリサに怒られる)
色々暴走気味で若干アホの子(人のことをいえる程コウタの頭はよろしくはないが)
そして新型神機遣いの、第一部隊隊長様だ。

それだけ。
本当に、それだけ。

家族とか生い立ちとか、どんな経歴でゴッドイーターなんて因果なお仕事をしようと思ったのか。
何にも知らないし、知らされていないことにようやっとコウタは気づいた。

「もう嫌なのになー、なんであたしってこう………」

ぶつぶつと言いながら、新しい酒瓶をあけようとするリーダー様に。
何て言葉をかけてやればいいのかもわからないので、とりあえずこれ以上のアルコール摂取を阻止すべく、コウタはその手の酒瓶を取り上げた。

20130223
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