EXP不足、とか

大人げない、とか。案外短気だ、とか。
色々思うとこはあったわけだけど、これは。
これは、狡くないか?
アキラは思う。

「ん、んん……っ」

ちゅうちゅうぴちゃぴちゃと、居た堪れない粘着質な水音がアキラの耳に入ってくる。
ああ、もう、これは、酷い。
息が、できない。

「……ふ、んんん……」

苦しい、苦しいと自分に覆いかぶさる大きな背中を軽く叩けば、大体察したらしいユゥジが笑う気配がする。

「……アキラ、鼻で息しろっていってるだろ?」
「………そんなの出来ないです!」

余裕ですって顔しやがって! と言わんばかりに眉を吊り上げてふいっと顔を背けちゃったアキラだけど、やっぱり何かユゥジが笑ってるような気配を感じて、本当に面白くない。
なんだ、大人げないくせになんだってこう。
キスとか接吻とかちゅーとか、こんなことばっかりアダルティーなのだこのユゥジという男は!
ぷんすかぷんすか憤慨していたアキラは、ついさっきまでくっついていた唇と唇の温度をうっかり思い出して顔が熱くなってくる。
多分真っ赤だろうと予測して、また笑われたら甚だ遺憾であるので、とりあえずアキラは両手を顔に被せて隠しちゃうことにした。

「おいおいアキラ、顔見せろよ」
「いーやーでーすー」
「全く……あんま可愛いことするなって」

襲っちゃうぞーなんて不穏なことをほざいてのしかかってくるユゥジを、アキラは片手で必死になって押し返そうと試みる。もう片方でしっかりと顔面をガードしながら。
もう隠しても意味がないような気もするのだけれど、なんかアキラも意地になっちゃって止め時が全く見えてこない。
意地っ張りなそんなところも可愛いポイントではあるとユゥジは思うけど、まあその可愛らしい顔をしっかりみたいとも思うので、なんとか手をどけてくれないかなーなんて思ったりする。
もちろん思うだけじゃどうにもならないので、なんとか自分を押し返そうと必死なアキラの手をひっつかんで、さてどうするかとちょっと考えてから、あろうことかパクリと銜えてしまった。

「え、な、ちょっ………ええええ?」

混乱したのはアキラだ。
なんで? なにしてるのこの人。わたしの指をく、くわえてる?
それだけじゃなくて、軽く噛んでいる。いや、痛くはない。ない、けれど。

「う、あ、ちょっと……ひっ!」

ちょっと、すごく、妙な感じになって来ちゃったアキラはやめてくれとユゥジを見る。
当然もう顔は隠していない。と、いうよりそれどころではなくなっちゃってるわけで。

「ユ、ユゥジ……も、やめ……んっ」

ぞわぞわと寒気のような感覚が背中を走った気がして、アキラは唇を噛んだ。
そんな様子を見てユゥジは、してやったりって感じでにやりと笑う。

「………ちょっと刺激が強すぎたか?」
「も、う。……ばか……んっ」

舐めしゃぶって甘噛みしていた指を口から放して、ユゥジは真っ赤になったアキラの無防備な唇に、吸い付いた。
柔らかな口腔内を思う存分堪能して、同じように柔らかいその舌を自分と絡めて、ぐちゃぐちゃにして、それから。

「かわいいアキラを、見せてくれよ」

なんかもう、直視できないような笑みを浮かべるユゥジを見たアキラは。
やっぱりこの人は狡い! と、もう一度、改めて、再び。
強く、強くそう思った。





20120106
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