分割愛

夜も昼も真っ赤な世界で、夜か昼かもわからない時間にカズキは目を覚ましました。
本当に突然に目が覚めたので、カズキはきょとんと小首を傾げます。
一体どうして自分は起きたんだろう、まだボクは眠いのに。
考えに考えた末、一緒に寝ていたアキラに尋ねようと、自分のお隣に視線を向けて。
カズキはやっと自分が目覚めた理由を知るのです。

「……アキラ……?」

そこで眠っているはずのアキラの姿が、影も形もなくなっていたのですから。



「アキラー?」

赤い山、赤い海、赤い空、赤い大地、赤、赤、赤、赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤。

赤は好きだけどアキラのことがもっと好きなカズキは、自分より随分と小さいアキラの背中を探します。
何もかも真赤に侵食されていく世界で、唯一侵されない綺麗なモノ。青色を感じさせる存在。

どこまでも自然でいて、どこまでも異質。

そんなアキラを見つけるのは、カズキにとってそんなに難しい事ではありません。
すぐに見つけた小さな背中にカズキは飛び付き、その勢いを殺せなかったアキラは赤い地面に倒れこんでしまいました。

「……カズキくん、ダメだよ」

胸元に頭を刷り寄せて、猫のように甘え出すカズキにため息を一つ溢したアキラは、その後頭部を軽くぺしりと叩きます。
もっともそんな軽く叩いたところでちっとも効果なんかないのですが。

「アキラ、アキラ、アキラ、アキラ」
「……なぁに、カズキくん」
「アキラ、アキラ、アキラ」
「カズキくん?」

困ったように笑うアキラに、もっともっとたくさん名前を呼んでほしくてカズキは何度も何度もアキラの名前を呼びます。
カズキにとってその名前は魔法の呪文みたいなものです。唱えれば唱えるほど幸せな気分になれる、幸せの呪文。アブラカタブラよりも確実なお喜びをお約束します。

「アキラ、アキラ! ダイスキ!」
「………………」

思いをそのまま伝えれば、アキラはこう答えます。

「わたしもすきだよ…………××××」



さて、××××とは誰なのでしょうか。
特にカズキは気にしません。
しませんが、妙に懐かしいような、そんな、気が。





20111231
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