イーティング

※残留ED後



首輪と鎖で繋がれる夢を見た。
頑丈な首輪と鎖の繋がれた、先は。

「………苦しいわ、トラ」

ぎゅうぎゅうと強くきつく抱きしめられて、いいかげん苦しくなってきた撫子はお腹あたりにまわされた寅之助の腕をぺしぺしぺしぺし引っ叩く。
今日も今日で元気に反政府活動もとい、西園寺しぐれの奪取に勤しんだね! さあ寝ようね! とか言いながら横になったばっかりなのになんだってこうもぎゅうぎゅう締め付けてくるのかと心の底から思う。
寝る時に寅之助が抱きついてくるのはもうすでに撫子の中ではデフォルトになってるし、別に気にしないけれども。
だからって今日は力が強すぎる。
下手すれば明日目覚める前に窒息なり酸欠なりでぽっくりいっちゃってる可能性が高いレベルだし。

「トラ、ちょっと。ねえ、トラ!」

いくらぺしぺし叩いてもうんともすんとも言わない寅之助にいい加減腹の立ってきた撫子は、自分を拘束する手の甲を思いっきり抓ってやる。

「……………いてぇ」
「無視するのが悪いんじゃない! 苦しくて寝られないわ!」
「あー……こら、暴れんなよ撫子」
「じゃあ腕緩めてよ!」

じたばたじたばた暴れ出す撫子を更に強い力で押さえつけてくる寅之助に、本気で命の危険を感じて。
必死にもがいて何とか寅之助の顔を見ることに成功した撫子は、これまた違った意味で命の危険を感じる羽目になった。

あの、目 だ。

ぎらぎらと危うく光る、あの目。
左右で色の違うその目が、じっと撫子を見ている。

「………ト…」
「逃がさねえよ?」

撫子に別に逃げるつもりなんて毛頭ないのだけれど、無性に落ち着かないような気がして、でもなんか身動きしちゃいけないような気もして、撫子はぴしっと動きを止める。
目が、目が怖いと思う。
撫子が怯えて、恐れたあの目。
けれど、たしかに怖いのだけれど。
何か、どこかが、違うような気がして。

「…………あ、の。トラ……?」
「ああ、逃がさねえ逃がさねえ。……なあ、撫子」
「な、に?」

うっすらと笑いながら、寅之助は撫子の首筋をぺろりと舐める。
その感覚にぞわりとして、撫子は声が出ない。
なにか、言わないと、いけないような気がする、のに。

「首輪が、欲しいなァ……頑丈な鎖も……」

ぽつりとつぶやくようなその台詞に、さっき覚えたあの違和感が何なのか、撫子は理解した。





食ワレ ル。

101207
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