生きとし生けるもの、その全てに平等な幸せを望む ※残留ED後 終夜は危なくなったり持ち直したりを繰り返し、周囲を一喜一憂させながらも生きていた。 隣に撫子を置いて。 「今日は調子良いの?」 「うむ、素晴らしく調子が良いぞ」 「そう、よかった」 今日は持ち直した方だったから、今までの分を取り戻そうとしてるのかそれとも溜めとこうとか思ってるのか、べったりと撫子に貼り付いて存分にいちゃいちゃと、べたべたと、零や楓に気を遣わせつつ終夜は楽しそうに撫子にすり寄っている。 そんな終夜をもうどっか微笑ましいような気分で見つめていた撫子の中に、すでに羞恥心とかそういったものはあんまりない。 慣れたというのも当然あるのだけれど、それだけでなくて。 それだけで、なくて。 「撫子、何を考えておるのだ?」 「え………っ?」 もしかしたら、明日、この人は目を覚まさないかもしれない。 もしかしたら、今この瞬間にこの人は。 「……大丈夫だ、撫子。心配はいらぬ」 「っ!」 撫子の不安を見透かしたように、終夜は言う。 射干玉の黒髪を優しく、優しく梳きながら。 「そなたを置いてはどこにもいかぬ、約束しよう」 何でそんなに自信ありげなの? なんて思えちゃうくらいにきっぱりと告げられて、撫子はちょっと微笑んでから終夜の胸に顔を埋めた。 終夜の言葉はほんの少し嬉しくて、優しくて、とても痛い。 だから泣きたくなったけど、そんな顔は見せたくない。 せめて、せめて、こうしていられる日は幸せでいなくっちゃ嫌だと思って。 髪を梳く終夜の手はとても優しいしあったかい。 前に終夜は撫子のことを残酷なくらい優しいなんて言ったけど、それはお前のことだよって叫びたいくらいに、その優しさが痛いと撫子は泣いた。 約束なんて、そんな簡単に言うけれども。 ―――その単語の意味、ちゃんと知ってるの? 「………約束はね、守るためにあるのよ」 「私は守れぬ約束などはせぬ」 やっぱり自信ありげに、終夜が笑う。 つられるように、撫子も笑った。 「……………本当ね?」 「ああ、必ず」 しあわせになりたいなあ、って撫子は願ってる。 いつの日か、明日に怯えることなくしあわせでいられる日がくるようにって。 そう、心の底から。 101202 title/群青三メートル手前 |