この平穏でくだらない時間が永遠に続きますように

※残留ED後



目を覚ます。
カーテンを開ける。
そして、広がる青い空。

―――ああ、なんて世界は平和なんだろう!

撫子はそんなことを思いながら大学へ行くため準備を始めた。



「お嬢様、いってらっしゃいませ」
「ええ、いってくるわ」

いつも通り見送ってくれるお手伝いさんに笑顔で告げて、撫子は家を出る。
今日の授業はちょっと気難しそうな教授のアレだったとか、そういえばレポートの期限はいつまでだったっけとか、そんないろんな事を考えつつ門をくぐると。

「遅い」

仏頂面で壁に寄り掛かる、理一郎が立っていた。

「そんなことないわ、理一郎が早すぎるのよ」

いつもどおりにそう返して、撫子は歩き出した理一郎の腕に自分の腕をからませる。
これも、いつもの事。
ちらりとそれを確認した理一郎は、ふわりと微笑んで視線を前に戻す。
腕から伝わる体温。
しっかりとした感触。
悪夢のような世界で、自分が焦がれ、乞い、求めたもの。

「今日は、いい天気よね」
「そうだな」
「そういえば、今週の土日……空いてる?」
「どうした?」
「二人でお出かけでもしましょう? 最近レポートばっかりで疲れちゃった」
「ああ、行こうか」

「楽しみね」なんて言って、笑う撫子がとても愛しい。

「でも、お前おじさんにはちゃんと言っておけよ」
「ふふっ、そうね。言わなきゃ怒られちゃう……理一郎が」
「まあ、別に気にしないけどな」

多少の障害はあるけれども、これっぽっちの事ならばなんとでもしてやろうと理一郎は思う。
だって、ここにはちゃんと撫子がいて、自分の腕をとって笑っている。
それだけで、きっと何だってできる。



腕を組んで、二人で。
青い空の下を歩く。

―――ああ、何て世界は平和なんだろう!

101128
title/群青三メートル手前
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