真夏の夜に夢

夏の夜は暑いものです。

ぎしぎしと軋むベッド、熱い吐息、嬌声、全部が全部体感温度の上昇に一役も二役も買っているようにタクトには思えてなりません。

「ひ……あ、ああっ」

アキラの高い声が、またタクトを熱く高ぶらせていきます。彼の目に曝された彼女の肌は酷く白く、思わずごくりとのどを鳴らしました。

自分でも飼い慣らせない熱を受け入れているアキラの、びくびくとはねる体をベッドに押さえつけながら、タクトは自分がさながら肉食獣にでもなったような錯覚を覚え、心の中で苦笑します。

「ふ、あ……たく、とぉ………?」

動きがいきなり止まったことに気付いたアキラが、舌っ足らずにタクトの名前を呼びます。息を荒げて、顔を紅潮させた彼女を愛おしげに見つめた後で、彼はその額に口付けました。

「んぅ……? あ……」
「どうした?」

擽ったそうに目を細めたアキラが、すっと伸ばした手がタクトの頬に触れます。何かを見つけたかのような表情を浮かべて、微笑んだ彼女を不思議に思って、彼は問い掛けます。

「……きれ、い」

アキラの視線の先には、タクトの左目があります。そしてその目は真っ青に染まっていました。

「……綺麗なものか、罪の証が」
「たくと、くん………」

アキラの選択によって、生きて青の世界に残ることはできたものの、タクトの中には赤の世界の住人だった頃の名残が残ってしまったのです。

そのうちの一つが、この感情の高まりとともに青く輝く左目。

タクトが嫌う左目を、アキラはきれいだと思っています。理由はありません。ただきれいだと感じるのです。

「……やぁ、あああっ」
「何も言わないでくれ……今は………」

罪の証を、人を苦しめた証を、アキラを悲しませた証を、どうしてきれいだと、彼女は言えるのか。タクトには理解ができません。

もしかしたらそうではなく、ただ理解したくないだけなのかもしれません。

けれど、これ以上は何も聞きたくなくて、タクトはアキラの唇を塞いで彼女の体を激しく揺さぶります。

「ふ、んん……ぅ」

快楽のせいか、酸欠のせいか、霞のかかる意識の中でアキラはただひたすら願っていました。

いつか、彼が許せる日が来れば良いなと。

そして、彼女の意識ははじけて、暗転します。

Odd eye/オッドアイ
title/ユグドラシル
100916
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